2017 Fiscal Year Annual Research Report
Ecophysiolosical consequences of chronic ethanol consumption on human gut microbiota: implications for the pathogenesis of ethanol-related colorectal cancer
Project/Area Number |
15K14682
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 亨 東北大学, 工学研究科, 教授 (80268523)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 習慣的多量飲酒 / 大腸がん / 腸内細菌 / アセトアルデヒド / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌のうち,ヘテロ乳酸発酵を行う二つの異なる乳酸菌種(Bifidobacteriumおよび heterolactic Lactobacillus)について,酸化ストレス付与(2 mM H2O2曝露)の影響を,これらの微生物のアセトアルデヒド(AcH)代謝及び短鎖有機酸代謝の観点から調べた.その結果,これらのヘテロ型乳酸菌では酸化ストレス付与によりAcHの蓄積および乳酸や酢酸の生成能の減少がもたらされることがわかった.習慣的多量飲酒がヒトの大腸内菌叢構造に及ぼす影響についてアルコール依存症患者と非患者で比較しすでに報告した知見(Tsuruya et al., Scientific Reports 6, 27923; doi:10.1038/srep27923)と,これらの知見に基づいて,次の仮説を提唱するに至った.習慣的多量飲酒により,ヒト大腸粘膜細胞やその近傍の腸内細菌のエタノール代謝を介して大腸粘膜とその近傍に酸化ストレスが恒常的に生成される.この大腸内酸化ストレスは,アルコール関連大腸発がんのリスク因子となる.酸化ストレスが大腸内の菌叢に負荷されることにより菌叢構造に変化がもたらされ,善玉偏性嫌気性菌の存在比を減少させるとともに,腸内細菌の短鎖脂肪酸(SCFA)の生成能を低下させ,大腸機能に悪影響を及ぼす.習慣的多量飲酒者では大腸内の主たるAcH生産者(偏性嫌気性菌)の存在比が減少するため,大腸内のAcHの濃度は発がんのリスク因子として作用できるほど高くならない.今後,習慣的多量飲酒を模した実験動物(マウス)へのエタノール慢性投与実験を行い,この仮説の妥当性について検証する予定である.
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