2016 Fiscal Year Research-status Report
アンサマイシン系抗生物質のHfq過剰発現による細胞分裂阻害の解除機構の解析
Project/Area Number |
15K14690
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高田 綾子 東京工業大学, 技術部, 技術職員 (20401565)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗生物質 / Hfq / RNA代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hfqタンパク質は細胞分裂タンパク質FtsZの合成低下を引き起こし、細胞分裂を阻害する。この分裂阻害をRifampicinとStreptovaricin Cが解除し、コロニー形成を回復することを見出した。前年度はRifampicin以外のアンサマイシン系抗生物質がHfq過剰発現による細胞分裂阻害を解除し、Rifampicin以外のRNA合成阻害剤は細胞分裂阻害を解除しないという知見が得られた。アンサマイシン系抗生物質はRNAポリメラーゼに直接作用して、RNA合成の開始反応を阻害する。そこで、RNAポリメラーゼβサブユニットをコードしRifampicinに耐性を示すrpoB変異の遺伝的背景において、Hfq過剰発現株を構築した。その結果、構築したrpoB変異株においても、Hfq過剰発現による細胞分裂阻害が引き起こされたが、Rifampicinによる細胞分裂阻害は解除さなかった。更に、Rifampicin以外のアンサマイシン系抗生物質について検定を行った結果、Rifampicinと同様に細胞分裂阻害は解除されなかった。これらの結果から、アンサマイシン系抗生物質はRNAポリメラーゼを介してHfq過剰発現による細胞分裂阻害を解除することが示唆された。本菌株をスクリーニングに利用することにより、アンサマイシン系抗生物質が排除され、新規抗生物質が得られる可能性が高くなると考えられる。 また、本菌株の構築過程で、RNAポリメラーゼ機能とHfqタンパク質発現量のバランスにより細胞分裂阻害が解除されるという予備的な知見が得られた。このバランスを詳細に解明することにより、RNA代謝を標的とするより高機能な薬剤の開発が期待できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNAポリメラーゼβサブユニットをコードしRifampicinに耐性を示すrpoB変異の遺伝的背景において、Hfq過剰発現株を構築し、Rifampicinを含むアンサマイシン系抗生物質が、Hfq過剰発現による細胞分裂阻害を解除しないことを確認した。本菌株を用いた新規アッセイ系を構築したが、抗生物質の探索までは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した新規アッセイ系を用いて、RNA代謝阻害剤のスクリーニングを行う。 Hfqを過剰発現したrpoB変異株において、Hfqタンパク質およびFtsZタンパク質の発現状態を調べる。また、Hfqタンパク質以外に発現量が変化しているタンパク質がないか、2 次元電気泳動により網羅的に調べる。変化のあったタンパク質については、マススペクトル解析により同定を行う。 rpoB変異の遺伝的背景において計画通りの結果が得られない場合は、RNA合成に関わる別の因子(σ因子など )の変異株について検討する。また、活性を示す抗生物質の評価のためのin vitroアッセイ系を構築する。
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Causes of Carryover |
実験が効率的に行われ、当初予定より試薬や消耗品の購入が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発表のための外国旅費および、試薬・消耗品の購入費に充てる。
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