2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14692
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 武志 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60242327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二見 邦彦 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (00513459)
片桐 孝之 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (50361811)
寺原 猛 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (70547059)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 真珠 / 細菌 / アコヤガイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海産養殖真珠の品質と細菌の関係を明らかとし、成果を真珠養殖技術の向上に還元することである。 海産真珠養殖の現場では、高品質なものから低品質なものまで幅広い特徴を有する真珠が生産されるため、高品質な真珠の割合を増やすことは永年の課題である。低品質な真珠として評価される特徴としてシミ、変形が挙げられるが、最近の報告によって、核と真珠層との間での細菌による炎症反応がその原因であるとする説が浮上した。この発見は、これまで不明瞭であった異常真珠の形成機構の解明を期待させるものであり、水産学、特に細菌学の立場から十分に研究する必要性があるが、詳細な検討はまだ行なわれていない。そこで本研究では良質な養殖真珠の生産に資するため、真珠の品質とその真珠層の細菌の関係について検討することとした。 アコヤガイから真珠を取り出し種々の実験に供した。真珠層に付着する細菌相を検討するため、真珠層の粉末からDNAを抽出した後16S rRNA遺伝子を標的としたPCRを行った。得られた産物についてクローンライブラリーとTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism; 末端標識制限酵素断片多型(T-RFLP)による解析を行い細菌叢を検討した。真珠の品質については、目視による評価を行うと共に、一部は光学顕微鏡による切片の観察を行った。また真珠層から各種の培地を使用して細菌の分離を試みた。 さらにアコヤガイ外套膜から分離した細菌を使用し、養殖場における真珠形成実験も行った。アコヤガイの挿核手術の際に、細菌菌体を核とピース(外套膜移植切片)と共に貝の生殖腺に入れた。その後養殖を行い、貝から真珠を取り出しその品質を目視で検討した。またアコヤガイ真珠の他にクロチョウガイ真珠を使用し、アコヤガイの手法に準じて培養法にて細菌の分離を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究ではアコヤガイ真珠を使用して実験を行った。本研究は萌芽的要素が大変強く、実験手法に関し既往研究からの情報収集が困難であったため、手法の検討、確立を初期の目的とした。実験は以下の各項目について行った。真珠外観の観察として、写真撮影を行い、所見(大きさ、シミ、変形等)の記録、整理を行った。また光学顕微鏡による切片の観察を行った。さらに真珠を破壊して、無菌的に核と真珠層を分離する方法を考案した。真珠層に付着する細菌相の解析は培養法と非培養法にて行った。各種の栄養培地を使用して細菌の分離のための培養実験を行った。また真珠層DNAからは16S rRNA遺伝子をPCRにて増幅した。得られた産物を使用してクローンライブラリー法とT-RFLP法により細菌叢を検討した。 海産養殖真珠の生産状況や品質は、毎年の海況により左右されるため、平成28年度の研究では、昨年度の実験に準じて、主にアコヤガイを用いてさらに実験を進めた。新たに入手した貝から真珠を取り出して、それらの真珠層DNAを使用してクローンライブラリー法とT-RFLP法により細菌叢を検討するとともに、培地による培養を試みた。 以上の実験の他に、平成28年度の研究では二つの実験を行った。まず、アコヤガイの外套膜から分離した細菌を、実際の養殖現場において挿核手術の際にアコヤガイ生殖腺に挿入して貝の養殖を行った。取り出した真珠の品質は目視で観察した。また、クロチョウガイ真珠を入手し、無菌的に分離した真珠層から細菌の培養を試みた。 アコヤガイ真珠の真珠層DNAによるクローンライブラリー解析ではグラム陽性細菌、陰性細菌の種々の菌種が同定された。またT-RFLPの波形データは多変量解析に供した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は研究成果の最終取りまとめを行う。また、前年度までの実験結果において、不明瞭、不十分な点をフォローするために追加、補足実験を行う。得られたデータを解析してその特徴を明らかとし、真珠の性状と真珠層の細菌叢の相関を取りまとめる。養殖真珠の生産状況や品質は、毎年の海況等により左右される。また、真珠の解析数が増加するにつれて、得られた結果が複雑化している。そのため必要に応じて新たに真珠貝および真珠を入手してサンプル数を増加させて実験のフォローアップを行う。以上を総括して、海産養殖真珠の品質と細菌の関係を考察する
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Causes of Carryover |
平成28年度予算は順調に消化された。結果として僅かな金額が端数として発生したため、次年度の予算と合わせて使用するものとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品として使用する。
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