2015 Fiscal Year Research-status Report
耐熱性リフォールディング触媒の開発と抗体産生への応用
Project/Area Number |
15K14695
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田村 隆 岡山大学, その他の研究科, 教授 (40253009)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ジスルフィド架橋 / 高度好熱菌 / 緑色蛍光タンパク質 / リフォールディング / グルタチオン / ジスルフィド異性化酵素 / 変性タンパク質 / 酸化還元電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
組換えタンパク質の発現時に複数のジスルフィド架橋を正しく導入することは, 抗体医薬品など複数のジスルフィド架橋を持つタンパク質の製造には大きな課題である。タンパク質のリフォールディングを高温で効率的に進める触媒として, 本研究では高度好熱菌Thermus thermophilus HB8がペリプラズム空間に発現させる耐熱性ジスルフィド異性化酵素TthA0610,TthA1422を同定し, その酵素化学的諸性質の解明と応用開発に取り組む。従来よりジスルフィド異性化酵素の評価法には,変性RNaseを基質としてRNA分解酵素の活性回復を指標とした酵素アッセイ法が用いられてきた。しかし, 微量検定が難しいことやRNaseを用いるためにリフォールディング温度の上限が低いという制限があった。本研究では,高温でのタンパク質リフォールディングを目指しており,自己リフォールディング力が高い耐熱性superfolder GFP(sfGFP)に複数のジスルフィド架橋を導入した新規なPDI測定用基質を開発して,正しいS-S架橋形成に依存して緑色蛍光を発するsfGFP変異タンパク質を2種類,作成した。sfGFP-1SSは分子内に一本のジスルフィド架橋(P56C-L141C)を持ち,sfGFP-2SSは(P56C-L141C, S202C-T225C)の2本のジスルフィド架橋を持つ。5 mM DTT存在下8M塩酸グアニジンによってsfGFP-1SSまたはsfGFP-2SSを還元的に変性させた後,酸化剤(H2O2)を加えて誤った架橋形成を行わせて蛍光発光能を完全に失ったsfGFP-1SS とsfGFP-2SSをそれぞれ調製した。これらは透析によって還元剤と変性剤を除去しても蛍光の自己回復が進行しない安定な変性タンパク質として回収できた。この基質を用いてサーマス菌のTthA0610,TthA1422のジスルフィド異性化作用により正しく自己フォールディングさせる蛍光アッセイ法の最適条件の確立に取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,下記の項目を達成することができている。緑色蛍光タンパク質sfGFPにジスルフィド架橋を1本導入したsfGFP-1SS,2本導入したsfGFP-2SSを作成して,大腸菌内で組換えタンパク質として発現させて,アフィニティカラムにより精製するための条件を検討した。その結果として,再現性の高い発現系を構築した。さらにタンパク質を変性させた条件の下,誤ったジスルフィド架橋を導入するための酸化条件を検討して,銅イオンを触媒として後にペニシラミンのような銅キレート剤で回収する方法なども検討したが,結局,過酸化水素を用いて酸化させた後,余剰の過酸化水素はカタラーゼによって消去する方法が,自己リフォールディングによる回復率が高いことが判明した。高度好熱菌サーマス菌からクローニングしたジスルフィド異性化酵素を大腸菌で異種発現させて,同様にニッケルカラムによるHis-tagアフィニティ単体を用いた精製を行って,高い温度で働くリフォールディング触媒の発現系を確立した。この組換え酵素を用いてsfGPF-1SSおよびsfGFP-2SSのリフォールディングアッセイ法を確立した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)コンビナトリアル変異検索によるTthA0610/1422の潜在機能開発 sfGFP-1SSまたはsfGFP-2SSをThermus菌のペリプラズム空間に分泌させるためにN末端に細胞外移行シグナルを付加したGFP発現系を確立する。つぎにTthA0610/1422の共通する活性中心配列[CPYC]にコンビナトリアル変異[Cys-Xaa-Xaa-Cys]を導入してsfGFP-2SSの蛍光発色を指標として,より優れたフォールディング能を提供する改変型Ttha0610/1422を作成する。この方法により組換えタンパク質のフォールディングに特化したTtha0610/1422のチューニングが可能であると展望している。 (2) 高温条件下でのタンパク質リフォールディング技術(PTR)の開発 高温条件下のタンパク質リフォールディングを実現するためにサーマルサイクラーを用いてこの過程の条件検討を行う。高温,低温のサイクルプログラムや時間,サイクル数など蛍光収率でモニターしながら条件検討を行う。酸化還元電位の緩衝剤として添加するグルタチオンの酸化還元比(GSH/GSSG)なども重要な検討項目とする。
|
Research Products
(5 results)
-
[Journal Article] Reactivity of sorbose dehydrogenase from Sinorhizobium sp. 97507 for 1,5-anhydro-D-glucitol.2015
Author(s)
Araki, T., Nakatsuka, T., Kobayashi, F., Watanabe-Ishimaru, E., Sanada, H., Tamura, T., and Inagaki, K
-
Journal Title
Biosci. Biotechnol. Biochem.
Volume: 79
Pages: 1130-1132
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Recombinant expression, molecular characterization and crystal structure of antitumor enzyme, L-lysine α-oxidase from Trichoderma viride.2015
Author(s)
Amano, M., Mizuguchi, H., Sano, T., Kondo, H., Shinyashiki, K., Inagaki, J., Tamura, T., Kawaguchi, T., Kusakabe, H., Imada, K., and Inagaki, K.
-
Journal Title
J. Biochem
Volume: 157
Pages: 549-559
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Draft genome sequence of Streptomyces incarnatus NRRL8089, which produces the nucleoside antibiotic sinefungin2015
Author(s)
Oshima, K., Hattori, M., Shimizu, H., Fukuda, K., Nemoto, M., Inagaki, K., and Tamura, T
-
Journal Title
Genome Announcements
Volume: 3
Pages: e715
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
-