2015 Fiscal Year Research-status Report
表面微細構造を形成した寒天培地による微生物の増殖制御
Project/Area Number |
15K14703
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 振一郎 国立研究開発法人理化学研究所, イノベーション推進センター, 特別招聘研究員 (10393480)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
礒島 隆史 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 専任研究員 (40271522)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 微生物培養制御 / 寒天培地表面形状制御 / パターン転写条件 / 刻線型回折格子 / シリコーン樹脂 / 表面親水化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、寒天培地の表面構造を変えることによって微生物の増殖を制御することを目的とする。様々な表面形状の寒天培地が微生物の増殖に及ぼす影響を検討し、サイズ効果・形状効果(一次元的な線状パターンや二次元的な格子状パターンなど)・表面物性効果を明らかにする。 初年度は、まず寒天培地への微細構造の転写条件の最適化に取り組んだ。1次元周期構造の原型として刻線型回折格子(周期3.3ミクロン、1.7ミクロン、0.8ミクロン)を用い、これをシリコーン樹脂(PDMS)に転写し、さらにシリコーン樹脂の型から寒天に転写を行った。回折格子・シリコーン樹脂型・寒天表面の3次元表面形状をレーザー共焦点顕微鏡により計測して転写再現性を検証したところ、周期についてはいずれも精度よく転写できたものの、構造の高さについてはシリコーン樹脂型への転写で0~40%程度の高さ低減が見られ、さらに寒天表面への転写ではシリコーン樹脂型から91-95%もの高さ低減となった。寒天表面の周期構造の高さは最も高いものでも110nm(周期3.3ミクロン 、回折格子の高さ1.2ミクロン シリコーン樹脂型の高さ1.2ミクロン)と微生物培養実験には不十分と考えられたため、改善法を検討した。シリコーン樹脂表面は疎水的で寒天溶液の密着性が低いためと考えられたため、シリコーン樹脂表面の親水化のためにUVオゾン処理とエタノール等の塗布を試み、いずれも相当程度の改善が見られる(例えば周期1.7ミクロン の濃度3%の寒天転写表面で14nm→116nm)ことが明らかとなった。 微生物培養実験は単純な一次元的(線状)パターンにおけるサイズ効果の検討を開始する予定であったが、上述のように寒天へのパターン転写条件確立に手間取ったため、使用する微生物の選定を行うにとどまった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績概要に記載したとおり、本年度は寒天培地への微細構造の転写条件の最適化に加えて一次元的パターンにおける微生物増殖へのサイズ効果の検討を実験的に行う予定であったが、寒天培地表面への転写構造の高さが十分となる条件が実現できなかったため、微生物培養実験そのものに取り掛かることができなかった。しかしながら、シリコーン樹脂の表面親水化によりこの問題を解決できる見込みが立っているため、進捗状況区分としては「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
第2年度は、寒天への表面微細構造転写条件を早急に確定し、微生物培養実験に取り掛かる予定である。寒天への転写条件が確立できれば、様々な一次元および二次元パターンの形成は比較的容易であると考えられる。また第2年度に実施予定の表面物性効果の検討についても、接触角系による親水性評価および原子間力顕微鏡(AFM)による表面粘弾性評価ともに物性評価手法は既に確立されており、実験手法的に大きな困難はないものと考えられる。従って、第2年度中に当初計画通り、一次元および二次元パターンにおける微生物増殖へのサイズ効果の検討ならびに表面物性効果の検討まで実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記載したとおり、本年度は微生物培養実験に取り掛かることができなかったため、この実験にかかる物品の購入を行わなかったことが、予算の次年度使用額が生じた主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
第2年度は早々に微生物培養実験に取り掛かる予定であり、初年度未使用分を当初予定通り微生物培養観察系の構築および関連消耗品の購入に使用する計画である。
|