2015 Fiscal Year Research-status Report
野生漢方薬原料植物カラスビシャクの迅速作物化の為の有効多糖成分合成遺伝子の同定
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15K14711
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松岡 健 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40222294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム / RNAseq / 生薬原料 / アラバン / アラビノース転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国から採取した34系統のカラスビシャクを制御環境下で栽培し、その中から最も生育の良い系統を選び出した。また、この系統を含む複数の系統について、塊根中の坑アラバン抗体反応性を検討し、この生育の良い系統の塊根中にもアラバンが存在することを確認すると共に、これら複数の系統におけるアラバン含量の定量を進めた。 また、上記の最も生育の良い系統の葉から、PCR反応の鋳型とするために、DNAを抽出した。これと平行して、研究開始時点において公共データベースに登録されており公開されていた、中国大陸産のカラスビシャク関連の電子配列情報と、多種の類縁遺伝子のイントロンエクソン構造を下に、網羅的解析のために用いるRNAの純度検定に用いるためのRT-PCR反応で対象とする候補の遺伝子候補を5種選び出した。次いで上記のDNAを鋳型としたPCR反応を行うことで、これらのうち3種についてはDNA断片が増幅されることを確認した。またこれら増幅断片の配列解析を進め、解析が終了した100塩基程度からなる1種の断片中に、アミノ酸置換を伴う3塩基の置換を見出した。このことから、中国と日本のカラスビシャク中にはかなりの変異が存在する可能性が示唆された。 また、年度途中に中国のグループにより公開されたカラスビシャクの塊根のRNAseqデータを用いて、他植物で見出されたアラビノース転移酵素のオルソログの検索を順次進めた。現在迄に検索が終わった2種の酵素においては、共に完全長cDNAの配列をアセンブルすることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カラスビシャクから高純度のRNA調製が行えたことの確認のために、中国の研究グループの報告にある既知の遺伝子を用いたRT-PCRを行うことを計画しており、この候補遺伝子5種について、本邦産カラスビシャクのゲノムDNAを用いたPCRによりDNA断片の増幅を試みた。しかしなかなかPCRでの増幅が認められず、結果的にPCRに使用でくるプライマーの設計に手間取ってしまい、RNA抽出の条件を決定するに至らなかったため、当初計画した方法での研究に遅れが生じている。 一方、年度途中に中国の上記と別の研究グループが、カラスビシャクの塊茎の網羅的トランスクリプトーム情報を公共データベース上に公開したことを受けて、他植物の既知のアラビノース転移酵素との相同性解析から、二種のことなるアラビノース転移酵素のカラスビシャクのオルソログの推定mRNA配列の構築に成功しており、候補の絞り込みという点では、当初計画した方法とは異なる方法ではあるが、予定より進展している。 また、複数の系統由来の塊根におけるアラバン量の定量解析や、蓄積量の多い系統の選抜については予定どおり推移した。一方、種子を経由した遺伝的多様性の獲得については、自家受粉及び他家受粉とも殆ど種子が形成されなかったため、この方向での研究は進んでいない。 これらを総合して、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カラスビシャクの各器官からのRNA抽出条件を決定し、器官別の網羅的トランスクリプトーム解析を進めることで、当初の計画通りの研究を進める。 同時に、既に公開されているカラスビシャクの塊茎の網羅的トランスクリプトーム情報と、現在開始した国産カラスビシャクのドラフトゲノム解析の情報を併せて、器官別トランスクリプトーム情報の獲得迄に更に複数のアラビノース転移酵素オルソログの推定mRNA配列を構築する。次いで塊根由来のRNAを出発材料として前年度と平成28年度に構築したアラビノース転移酵素候補に対するcDNAの獲得を進める。その後、これらをタバコ培養細胞、及びハナタバコ由来のアラバン合成酵素の過剰発現でアラバンの分泌が見られることが報告されたシロイヌナズにこれらを発現させ、アラバンの合成が見られるかの検討を進める。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた実験のうち、最も高額な費用を要する網羅的遺伝子発現解析を行うに至らなかったため、大幅な金額が次年度に繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
早急にRNA抽出条件を決定することで、平成28年度の早い時期に網羅的遺伝子発現解析を進める。なお、網羅的発現解析については、試薬購入による学内機器の利用と、外注で費用に遜色が無くなりつつあるので、解析が可能となった時点で最も適した方法でデータの所得を図る。
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