2015 Fiscal Year Research-status Report
苦味レセプターTAS2R及び肝臓解毒酵素GSTの遺伝子多型と食品の苦味感受性
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15K14728
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
駒井 三千夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80143022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 知子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00342783)
白川 仁 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40206280)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TAS2R / bitter taste receptor / GSH S-transferase / gene polymorphism / cruciforous plant |
Outline of Annual Research Achievements |
ブロッコリー等のアブラナ科植物の摂取量が少ない集団で、各種の発がん率が高いというヒト疫学データが多数報告されている。このことから、アブラナ科植物の苦味感受性の個人差、すなわち苦味受容体(TAS2Rs)の個人差が摂取食物の選択に影響していることが推察された。さらに、アブラナ科植物成分を代謝(解毒)する肝臓内酵素であるGSTs(グルタチオン S-トランスフェラーゼ)も、酵素活性に個人差があり、遺伝子多型が認められる酵素である。よって、この研究ではその二つのタンパク質群の発現の個人差を明らかにすることによって、食品の好き嫌いの個人差と代謝の個人差を明らかにして発癌の個人差との関係を明らかにしていこうとした。 先ず、味覚受容体は25種類もある中で最もよく研究されているTAS2R38を中心に検討した結果、PTC (phenylthiocarbamide)やPROP (6-n-propylthiouracil)のレセプター候補として知られるTAS2R38 は、3か所のSNP の組み合わせによって、non-taster (AVI/AVI) 、medium-taster (AVI/PAV) 、super-taster (PAV/PAV) に分けられる。AVI/AVI 群はPTC, PROP に対する苦味感受性が低く、AVI/PAV 群は中程度の、PAV/PAV 群は高い苦味感受性を有することが知られている。しかし、カゼイン酸水解物や他の苦味物質に関しては、AVI/AVI 群が最も苦味感受性が高い結果となった。また、グレープフルーツ中の苦味成分に関しても、リモニンが唯一TAS2R38 に受容されるという報告がある (Meyerhof et al., 2012) が、グレープフルーツに対する苦味感受性の個人差がTAS2R38 の遺伝子型の違いで説明できないことが初めて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の研究実施計画にあった1)アブラナ科植物の調理法の違いによるisothiocyanate 類の濃度変化と苦味の変化、植物中のmyrosinase活性変化、および摂取後の尿中排泄変化の計測(ヒト被験者)は、他のTAS2Rs(1, 4, 7, 10, 14, 19, 46)の遺伝子多型解析に時間を費やした結果、次年度に回すこととなった。計画2)の健常人および癌患者のisothiocyanate類の苦味感受性の個人差の解析は、アンケート調査及びDNAサンプリングを終え、遺伝子多型解析を行った。とくに後者については現在まとめており、投稿して2回目の査読の段階にあるが、遺伝子データのため内容の公開を保留したい。計画3)のisothiocyanate類の苦味レセプターの同定と遺伝子多型の分類に関しては、TAS2R38の他にTAS2R1, 4, 7, 10, 14, 19, 46 等で解析を進めており、これは近々公開できるものと考えている。よって、今回の公表は研究計画成果の一部のみとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、計画1)ヒトisothiocyanate類の肝臓代謝酵素(GSTM1およびGSTT1)の一塩基多型(SNP)と尿中代謝物解析を予定通り行う。初期予定では癌患者の解析を入れていたが、予算縮小の影響があることと、遺伝子型との対応が明確になれば目的が達成されるため、健常人のみで行う事に変更したい。計画2)TAS2R38の遺伝子多型とGSTs(GSTM1およびGSTT1)の遺伝子多型との関連性の解析は一定の成果を得ている(論文査読中)。すなわち、消化器系の癌患者では、TAS2R38とGSTsの遺伝子多型の組み合わせパターンで、健常人とは異なるパターンが認められたので、これをさらに追求していくこととなった。計画3)のisothiocyanate類のKeap1-Nrf2系を介した発癌抑制における個人差の解析は、実験動物(ラット)での検討も視野に入れていたが、これについては他の研究者の成果でも証明されてきたので、これを参考にして考察していきたい。
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Causes of Carryover |
東北大学病院における癌患者のサンプリングに時間を要したことで、若干の後ずれが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に残ったDNA解析代等の消耗品費として326,344円、および旅費として75,000円を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Properties of Zip4 accumulation during zinc deficiency and its usefulness to evaluate zinc status: a study of the effects of zinc deficiency during lactation2016
Author(s)
Hashimoto A, Nakagawa M, Tsujimura N, Miyazaki S, Kizu K, Goto T, Komatsu Y, Matsunaga A, Shirakawa H, Narita H, Kambe T, Komai M
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Journal Title
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol
Volume: 310
Pages: R459-R468
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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