2015 Fiscal Year Research-status Report
食物繊維と相互作用する腸管上皮細胞由来膜タンパク質の探索
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15K14729
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
矢部 富雄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70356260)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ペクチン / 腸管上皮細胞 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然の健康食品素材として,生活習慣病の予防効果などが注目されている食物繊維がもたらす生理作用は,消化管機能への作用である。本研究課題では,食物繊維が絨毛を形成する上皮細胞の増殖に関与するメカニズムの解明を目指し,食物繊維が消化管に直接作用して局所的に生理活性物質の分泌を促すなどの機能を有する可能性を検証するため,「腸管上皮細胞表面には,食物繊維の構造特異的に相互作用するタンパク質が存在する」という仮説の立証を目的としている。今年度は,天然の食物繊維の中でも生理機能の報告が多いペクチンに焦点を絞り,プルーンから抽出・精製したペクチンを用いて,該当する小腸上皮細胞由来膜タンパク質のスクリーニングを行った。ペクチンは,プルーンエキスを蒸留水により希釈したのち,80%エタノールによりアルコール不溶性画分を調製し,さらにDEAE-セルロースカラムクロマトグラフィーにおいて主要な0.30 M炭酸水素ナトリウム溶出画分を試料として用いた。精製したペクチンは,ビオチン化したのちにストレプトアビジンを固定化した担体に結合させてアフィニティカラムを作成した。また,小腸上皮刷子縁膜をマウス小腸上部の空腸から調製し,さらに膜タンパク質を可溶化してToMP(Total Membrane Protein)を調製した。このToMPをペクチンアフィニティカラムに供してクロマトグラフィーを行い,0.5 M および1 M NaCl含有緩衝液において溶出されるタンパク質AsMP(Associated Membrane Protein)を得た。得られたAsMPの中に目的の膜タンパク質が存在している可能性が高いと考えられ,現在その同定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,食経験のある食物繊維を広く標的とするため,イヌリン,グルカン,アルギン酸,フコイダンをそれぞれ野菜・果物や海藻から抽出する計画であったが,仮説の立証に最も重要な食物繊維の構造特異的に相互作用するタンパク質が存在するかどうかをまずは検証するため,これまでに生理機能について多くの報告があるペクチンにのみ絞って研究を進めた。そのため,翌年度に計画されていた膜タンパク質のアフィニティカラムクロマトグラフィーによる精製(標的タンパク質の探索)を前倒しして実施することができ,現在までにAsMPとして複数のタンパク質を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,得られたAsMPに対してMALDI-TOF-MSもしくはプロテインシーケンサーにより標的タンパク質を同定した後,SPR法によって分子間相互作用を測定し,ペクチンとの結合力を解析する。また,細胞質膜外領域に存在するアミノ酸配列からペプチド抗体を作成し,ヒト結腸がん由来株化細胞で小腸上皮細胞のモデルとして知られるCaco-2細胞を用いて,小腸上皮細胞様に分化した後に,作成したペプチド抗体により細胞免疫染色を行い,膜タンパク質の存在を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は1,056円であるので,ほぼ予定どおり助成金を使用したと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金についても当初の予定どおり使用する計画である。
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