2015 Fiscal Year Research-status Report
ミラクリン非感受性のヒト遺伝子解析による味覚修飾分子機構の検討
Project/Area Number |
15K14734
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
井上 裕康 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (40183743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 味覚 / ミラクリン / 味覚受容体 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
味覚はヒトの健康な生活のために重要な感覚で、老化や疾病により変化するが、味覚の分子栄養学的研究は発展途上の段階にある。私たちは酸味を甘味に変換する味覚就職物質ミラクリンの分子作用機構解明を目的に研究を進めている。 本研究では、ミラクリン非感受性のヒトに特有の遺伝子変異を同定し、その遺伝子産物を培養細胞系で発現させ、ミラクリン感受性群と比較することで、ミラクリンと相互作用する味覚受容体の結合部位、あるいは味覚修飾に関わる新規タンパク質の同定を行うことを目的とした。現在までのところ、ミラクリン非感受性のヒトに特有の遺伝子変異の同定までには至っていない。 一方で、味覚受容体とミラクリンとの相互作用を明らかにするための基礎として、マウス酸味受容体候補に対するミラクリンの作用について検討した。酸味受容体候補チャネルは、酸刺激によってオフレスポンスと呼ばれる反応を示す特徴があるが、これをカルシウムイメージングにより観察した。マウス酸味受容体候補を発現させた培養細胞に、クエン酸の刺激を加えるとオフレスポンス反応が確かに見られるが、クエン酸処理前に細胞をミラクリンで処理すると、明らかに酸刺激後のオフレスポンスが抑制された。以上より、ミラクリンは酸味受容体候補に対してアンタゴニストとして作用することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画1年目でミラクリン非感受性のヒト遺伝子解析をする予定であったが、開始が遅れている。平成28年度に研究倫理委員会の承認を得て速やかに研究に着手する予定である。 一方で、マウス酸味受容体候補を対して、ミラクリンがアンタゴニストとして作用することを、カルシウムイメージング法を用いて新たに見出すことができ、ヒトの酸味受容体候補に対するミラクリンの作用機構を検討する上で、基礎となるデータを得ることはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
倫理委員会の承認を得た後、ミラクリン非感受性のヒト遺伝子解析を行う。ミラクリン感受性のヒト遺伝子解析も行い比較する。ヒト遺伝子解析のためには、口腔粘膜からゲノムDNAを抽出し、増幅後に候補となる遺伝子全体の塩基配列を決定する。候補とする遺伝子として、酸味受容体、甘味受容体、イオンチャネル型受容体などを取り上げる。得られたミラクリン非感受性のヒトの変異情報をミラクリン感受性群と比較して、その変異部分を同定する。
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