2016 Fiscal Year Research-status Report
種を超えたエクソソームシグナル伝達による画期的食品機能性発現の可能性
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15K14736
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山崎 正夫 宮崎大学, 農学部, 教授 (80381060)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / タマネギ / 抗炎症 / ケルセチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、平成27年度に得られた植物由来のナノ粒子に関する詳細な成分解析とマクロファージを用いた機能性評価を実施した。また、複数の食用植物由来のナノ粒子を調製し、ライブラリーを充実させるとともに、調製法に改良を加えることで、同一の素材から複数のナノ粒子を回収することに成功した。 タマネギよりナノ粒子を調製し、動的光散乱法によって粒度を確認したのち、成分分析と機能性評価を実施した。タマネギ中の存在する機能性成分として、ケルセチン及びその配糖体類が挙げられるため、これらがナノ粒子中に封入されている可能性を検証した。その結果、17000xg及び200000xg沈殿画分として得られたナノ粒子には、いずれもケルセチン及びその配糖体2種類が含まれていた。タマネギ果汁中に含まれるケルセチン類の全量のうち2%程度はそれぞれのナノ粒子中に含まれることが明らかとなり、ナノ粒子がポリフェノール封入体であることが初めて明らかとなった。また、ナノ粒子中のケルセチン類組成は、可溶性画分に存在している組成に比べて大きな違いは認められなかった。 また、ウコンを用いてナノ粒子を調製したところ、重量あたりの回収量が極めて多く、さらなる分画方法の確立を試みた。密度勾配超遠心法により、得られたナノ粒子は少なくとも4画分に分けることができ、この手法がその他の植物においても適応が可能であると思われた。 マクロファージを用いた細胞試験においては、タマネギナノ粒子がLPS誘導性炎症応答を抑制することが示された。前述のケルセチン類に着目して、マクロファージへのケルセチン類の移行を定量したが、細胞内でのケルセチン量は極めて微量か、検出限界以下であり、ケルセチン類がナノ粒子の機能性における活性本体ではないことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年の当初の目標としては、細胞内への取り込みの確認と、ナノ粒子の安定性評価及び機能性評価を挙げていた。細胞内への取り込みに関してはタマネギナノ粒子をモデルとして評価するに至ったが、細胞内取り込みを十分に評価できる指標としてケルセチン類を用いることが必ずしも妥当でないと推察された。このため、細胞内取り込みに関しては、引き続き新たな方法の確立を試みる必要性が課題として残された。 機能性評価に関してはタマネギ、ウコンに関する抗炎症性と複数の植物由来のナノ粒子によるガン細胞増殖抑制活性が示され、当初の予定を上回る成果が得られた。一方で、加熱を始めとする調理加工下での粒子安定性に関しては次年度以降の課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内取り込みに関してはタマネギ由来ナノ粒子をサンプルとしてケルセチン類を指標とした場合、細胞への移行量が極めて低いことが明らかとなった。このため、現在ナノ粒子中の脂質及びRNAの蛍光染色により細胞内動態を解析することを試みている。 H28年度までの成果として、ナノ粒子の抗炎症作用が認められる一方で、その活性成分としてポリフェノール類の可能性がほぼ否定された。現在、ナノ粒子内の核酸類が機能している可能性を推定し、RNAの細胞移行を確認するとともに、機能性成分としてのRNAの可能性を検証する。 ナノ粒子の安定性に関しては、当初の予定にあった通り加熱、冷凍を中心として様々なストレス下での粒子の安定性を動的光散乱法を安定性評価のスクリーニング法として用いることで検証する。
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Causes of Carryover |
調理加工に関する研究への着手が遅れ、当初予定していた解析に必要な消耗品の支出に至らなかったため。また、予定していた学会発表を次年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調理加工に関する研究に必要な消耗品を支出し、本年度の秋に実施される日本農芸化学会あるいは日本栄養・食糧学会にて発表を予定している。
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