2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14739
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
榎本 俊樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (70203643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 喬 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (20535041)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フグ卵巣の糠漬け / フグ毒 / テトロドトキシン / 発酵 / 微生物叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
フグ卵巣の塩漬け・糠漬けについてマウス試験法により毒性を評価した結果、フグ卵巣の毒性は貯蔵期間に関わらず、食用可能な10 MU/g以下のものが多く存在ていた。これらの結果は、フグ卵巣の毒性は個体差が大きいことを示唆していた。次いで、フグ毒(テトロドトキシン:TTX)のHPLCによる定量化を試みた。その結果、HPLCにおいて夾雑ピークの除去とTTX保持時間の延長が可能となり、通常のHPLCにおいてもTTXの定量が可能となった。開発されたHPLC法は、簡易に測定できるのみならず、分取も可能であることからTTX類縁体の解析にも利用でき、TTX軽減化への微生物の関与等への活用も期待できる。 培養法によるフグ卵巣の塩漬け・糠漬けの存在微生物の菌種同定を行った。その結果、卵巣本体の生菌数においては、予想していたよりも他のサンプルに比べて生菌数が少ない結果となり、糠中が100,000~10,000,000程度存在していたのに対し、卵巣中では100~100,000程度と若干少ない検出となった。フグ卵巣の糠漬けの糠サンプルから分離した菌種割合の結果より、10% MRS培地からTetragenococcus muriaticusが多く同定された。MRSの塩分非含有培地からはBacillus属細菌が多く単離された。GAMの塩分非含有培地からもBacillus属細菌とClostridium属菌が単離された。塩分含有のPDA培地からは真菌であるPhialosimplex属が多く同定されフグの卵巣の糠漬け中の主要菌の1つである可能性が伺われた。卵巣本体から分離した菌種割合の結果では、Tetragenococcus muriaticusが糠や浸出液の結果と同様に同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度フグ卵巣の塩漬け・糠漬けの約3年間の熟成を通して経時的にマウスユニットを測定することで、毒量の変動についての知見が得られた。さらに、HPLCにより簡易的にテトロドトキシンを定量できる測定条件を確立した。また、毒量を測定したサンプルに生息する微生物叢についても検討し、培養可能なものについては菌種の同定を行うことができた。本年度は主にテトロドトキシン及びその類縁体の変動及びテトロドトキシンに及ぼす微生物の影響についての検討を行うことになるが、昨年度の研究においてそのための基礎的知見は十分に得られたと判断している。ただ、塩漬け卵巣において毒量が少ないサンプルが多かったので、今年度も、塩漬け卵巣のサンプリングを継続し、正確な毒量の変動についての検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
HPLC・ELISA測定キット・LC/TOF-MSによるテトロドトキシン及びその類縁体の変動についての検討は、まず、昨年度サンプリングを行ったフグ卵巣塩漬け・糠漬け及び塩・糠・汁からテトロドトキシン及びその類縁体の抽出を行う。次いで、前年度開発した方法により前処理を行った上で、HPLCによるテトロドトキシンの定量を行う。さらに、前処理前のサンプルを用いて市販テトロドトキシンELISA測定キットによるテトロドトキシン及びその類縁体総量について検討する。また、テトロドトキシン及びその類縁体の変動については、上記の前処理サンプルにおいてLC/TOF-MSによる詳細な検討も行う。 単離した各種微生物が及びすテトロドトキシンの影響については、各種微生物にテトロドトキシンを添加後培養し、培地中に含まれるテトロドトキシンの消長について、HPLC及びELISA測定キットを用いて検討する。さらに、同様の検討をLC/TOF-MSにより行い、得られた結果を総合的に解析する。 昨年度において、培養法によりフグ卵巣塩漬け・糠漬け中に存在する微生物の挙動と同定を行った。しかし、培養できない微生物、あるいはすでに死菌となっている微生物に関する情報は得られていない。そこで、本年度は、次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を行い、フグ卵巣塩漬け・糠漬けに伴う微生物叢の変動について詳細な検討を行う。
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