2015 Fiscal Year Research-status Report
表現型の異なるスギの植林が様々な母岩流域生態系の無脊椎動物群集に与えるインパクト
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15K14743
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日浦 勉 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (70250496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎木 勉 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10305188)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カルシウム / 有機酸 / 暖温帯林 / 堆積岩 / 花崗岩 / スギ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はスギと広葉樹が森林生態系のカルシウム動態に及ぼす影響を流域スケールで解析し、様々な母岩流域生態系の無脊椎動物群集に与えるインパクトを明らかにしようとするものである。 そのため、ポット実験によりスギ、ヒノキ、ブナ、コナラ、ミズナラ、シラカシの日本産主要樹種6種の根からの有機酸浸出量を定量した。スギが他の樹種に比べて数倍の有機酸量を浸出させ、しかもそれは土壌中の利用可能なカルシウム量に依存しないことを明らかにした。また、有機酸浸出量と土壌中のカルシウム及びマグネシウムイオン量は正の相関を示した。これらのことはスギが他の主要樹種に比べて土壌中のカルシウム動態により強い影響を与えていることを意味するものである。 また、北大和歌山研究林とその周辺の植生の異なる流域でストロンチウム同位体をトレーサーとしてカルシウム動態を解析した。その結果、スギ林流域が照葉樹林流域と比較して河川水中のカルシウム濃度が数倍高く、スギは主に母岩である堆積岩中のカルシウムを利用していることが明らかとなった。 九大宮崎演習林に設置された品種別スギ共通圃場でリターを回収し、落葉中の化学成分分析を一部行った。その結果、品種によって有意に形質が異なることが明らかとなった。 また、異なった遺伝的性質を持ち異なった母岩で生育する天然性スギ林分の予備調査を秋田、佐渡、芦生、那智の各地で行った。各地の河川水、土壌、リターについては現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各比較観測項目は順調に進行している。実績の概要で示した結果のうち、主要樹種の根からの有機酸浸出量に関する研究内容は国際誌に発表した(Ohta & Hiura in press)。また、植生の異なる流域のカルシウム動態に関する内容は現在国際誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
樹種によって根からの有機酸浸出量が大きく異なることや流域によって河川水中のカルシウム含量が異なることが明らかとなったが、海霧由来のカルシウムをどの程度取り込んでいるかを定量するため、スギとヒノキを用いた林冠部のカルシウム取り込み実験も並行して行う。また九大宮崎演習林の母岩の異なる流域で水質や土壌の比較分析および無脊椎動物群集解析も行う。北大和歌山研究林のスギ産地別共通圃場において各産地4個体の林冠木を伐倒し、緑葉と細根を採取して形質の比較を行う。
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Causes of Carryover |
27年度は主にサンプリングを中心に研究活動をしており、化学分析に要する消耗品や分析料が多量に生じなかったためと、航空運賃などの旅費が早割を最大限に活用することで大幅に削減できたことなどで、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は残された化学分析に相当量の分析費用がかかる見込みであり、他にも旅費、消耗品や論文投稿料にそれ相応の費用が見込まれるため、予算は順調に消化する見通しである。
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