2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14765
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 継之 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90533993)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、セルロースミクロフィブリル(CMF)の結晶性と強度の関係について検討を進めた。低結晶性の試料として杉木粉、高結晶性の試料としてマボヤの被嚢を選択した。それぞれの出発試料より精製したCMFを既報に従ってTEMPO酸化した。0.01%濃度の懸濁液20mLを調製し、超音波ホモジナイザーで処理した。処理時間を5~200分とし、適宜サンプリングした。サンプリングしたCMFを透過型電子顕微鏡で観察し、CMF長の分布と平均値を求めた。CMFの幅は、過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線回折法より測定した。 CMFの水分散液を超音波ホモジナイザーで処理すると、キャビテーションによりCMFが断片化する。超音波キャビテーションとは、液中で超音波の疎密波が伝播する際に生じる直径10~250クロンの気泡とその消滅に関する現象のことである。気泡が消滅する際に、気泡を取り巻く溶媒は気泡の中心に向かって放射状に流入する。流速は気泡の中心からの距離に依存し、気泡付近のCMFは中心に向かって引っ張られる。この引張応力をCMFの破断挙動より解析し、CMFの引張強度を算出した。 低結晶性CMFと高結晶性CMFは共に、超音波の処理時間が短い時点(5分)では、長く、緩やかに撓んでいる様子が確認された。しかし、超音波の処理時間を長くするにつれてCMFは顕著に断片化し、1時間を超えると平均長はある一定値に収束した。この一定値は、低結晶性CMFで約300ナノメートル、高結晶性CMFで約1.5ミクロンであった。この測定値を超音波フラグメンテーション法の理論式に適用し、各試料について引張破断強度を算出した。その結果、各試料の引張破断強度は、低結晶性CMFで2~3GPa、高結晶性CMFで3~6GPaと推定された。すなわち、CMFは結晶性が高いほど高強度であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、セルロースミクロフィブリル(CMF)の結晶性と強度の関係について明らかにした。当初乾燥による影響も評価する予定であったが、乾燥を経るとCMFの分散性が乏しくなり、強度評価が難しくなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
乾燥の影響について、引き続き検討を進める。また、セルロースと類似の分子構造を有し、結晶密度のやや低いキチンについても、結晶性と強度の関係について検討を進める。
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