2015 Fiscal Year Research-status Report
シリカの作用で木質細胞内腔に成長する炭素物質の、旋回らせん構造を利用した機能化
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15K14766
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 幸恵 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30301120)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 木質科学 / カーボン材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリカ含有木材を炭化すると、フィラメント状の炭素物質が、細胞の内腔に成長する。このフィラメントは、グラフェンが旋回円すい状に堆積した、炭素超分子である。この炭素フィラメントの成長には従来の炭素材料製造と異なる特殊な反応場条件を要したため、応用はおろか基礎物性の研究がこれまで殆ど進んでいない。木質細胞が、原料・反応場としてこの炭素フィラメント成長に適し、再現性よく製造できることをつきとめた。さらに細胞内腔を反応容器とした電気化学的加工を加えることで、このフィラメントに温度/電子線に応答した可逆伸縮動をさせることに成功した。本研究ではこのモバイル機構を解明し、吸着・電気化学特性を明らかにすることで、分子篩・逐電・電池電極等、植物バイオマス発のインテリジェント素材の設計をめざす。 本年は円錐黒鉛フィラメントが数種の遷移金属元素化合物をインターカレーションすること明らかにした。これまでフラットな炭素六角網平面が結晶構造として堆積した黒鉛でのみ、層間挿入が可能であると考えられていたが、曲面であるうえ周期的にdislocationしたsuperstructureである円錐黒鉛フィラメントがごく一般的に層間挿入化合物を形成することが、初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定である、吸着・電気化学特性については、目的化合物の単離方法の探索が難航しており、時間を要する可能性があるが、一方で種種の層間化合物を形成することが明らかとなり、この層間化合物の物理的特性による分離からさらに当初の目的へ展開する可能性や、さらに新たな機能付与への展開へと繋がる可能性が生じているため、おおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
円錐黒鉛フィラメントが種種の遷移金属元素を旋回円錐層間に取り込み、層間化合物を形成することが明らかとなった。このインターカレーション能を利用した、単離方法の確立、反応性の高いエッジを露出させることによる表面加工、それによる触媒や薬品デリバリーデバイス、ナノ複合化などへの展開を探る予定である。
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Causes of Carryover |
前述のように、円錐黒鉛フィラメントの精製単離過程が遅れているため、窒素吸着実験による吸着能の検討などの実験が未履行となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未履行実験の遂行により、薬品、器具などの消耗品が生じる。次年度使用額はこの消耗品への支出へ充てる。
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Research Products
(2 results)