2017 Fiscal Year Research-status Report
木質炭化物表面の不均一な官能基分布及び定量の新規分析手法開発
Project/Area Number |
15K14776
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
山ギシ 崇之 成蹊大学, 理工学部, 助教 (60723830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | TOF-SIMS / 木質炭化物 / 金属イオン / 吸着 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いて、調製温度の異なる木質炭化物から得られたスペクトルデータに対し多変量解析を行った。多変量解析によりTOF-SIMSデータ中の汚染由来と試料由来のピークを区別する事で、異なる調製温度の木質炭化物から共通して高い質量をもった化学成分を見出した。また、これまでTOF-SIMSの針葉樹試料の分析では、リグニン由来の質量137、151のフラグメントイオンが同定されており、これらの質量は炭化により急速に失われることを確認した。一方、炭化による木質化学構造の変質によって生成したと思われる各種フラグメントイオンを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異動に伴う研究環境の変化などにより、研究遂行が遅れているが、TOF-SIMSなどの表面分析が木質炭化物に十分に適用可能な事が確かめられた。今後、木質炭化物中の金属イオン吸着に重要な化学構造の分布の可視化や定量法の開発が進むのではないかと予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
炭化によって木質炭化物中から得られるフラグメントイオンの量は急速に失われるため、通常のTOF-SIMS測定のみでは研究が進まないと考えられる。そこで、特定の金属イオンを吸着させた試料で、金属イオンと同様の分布で検出されるフラグメントイオンを探索する事で、吸着に重要な化学構造を推定したい。また、木質細胞壁レベルでの空間分解能でこれらの分布を可視化できるかも検討する予定である。調製温度によって重要な化学構造がどのように変化しているかを検討する事で、木質炭化物の金属イオン吸着性能を向上させるために、どのような化学構造を吸着サイトとして多く残存、或いは調整により付与させるべきなのかどうかを追及する。これら一連の検討により、木質炭化物の金属イオン吸着に重要な官能基を特定し、その分布や定量法の開発が進むと期待される。
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Causes of Carryover |
育児休暇に伴う研究期間の延長が出来なかった事、異動に伴い研究環境の変化などで研究遂行が遅れた事、研究内容に変更はないが、表面分析に特化したより本質的な研究を行う上での試行などが重なり研究が遅れた。研究遂行のために必要な、吸着させる金属イオンを有する試薬購入や、依頼分析などに用いる予定である。また、蓄積した研究成果を論文にするための費用としても適切に使用する予定である。研究成果は学会で発表するので旅費として適切に使用する予定である。
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Remarks |
微細構造プラットフォーム利用者の一人として報告書が公開される予定である。
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