2015 Fiscal Year Research-status Report
シラスウナギの接岸機構の解明:物理環境と行動特性に基づく多面的アプローチ
Project/Area Number |
15K14787
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 陽一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (30624902)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シラスウナギ / 接岸回遊 / 黒潮系暖水波及 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国で消費されるニホンウナギは、陸岸域に来遊した天然の稚魚(シラスウナギ)に依存した養殖によって担われている.近年,シラスウナギ漁獲量は激減し,社会的に大きな影響を与えているが,漁獲量変動の理解に重要なシラスウナギの接岸機構については明らかにされていない.そこで本研究の目的は,シラスウナギの接岸回遊には海洋環境を効果的に利用するメカニズムがあるとの作業仮説を立て,1)漁獲データ解析による接岸に影響を与える物理的環境要因の特定,2)調査航海による接岸回遊期の行動特性の把握,3)数値モデルによる仮説の理論的検証を含めた物理環境と行動特性に基づく多面的アプローチによりシラスウナギの接岸機構を解明することとした.本年度は、これらの項目のうち上記1を実施した.浜名湖を対象とした解析では、水温から作成した黒潮系暖水波及の影響を示す指標と漁獲量に対応関係が認められ、シラスウナギが暖水波及に伴って浜名湖に来遊していることが示された.黒潮に面した各県(海域・内水面)を対象とした解析では、データに制限があるため当初予定していたクラスター分析は不要と判断し、県・河川毎に漁獲・環境データを解析した結果、漁獲量が黒潮離岸距離・水温・風速に対応する県・河川が存在することが分かった.これらの解析結果から、シラスウナギの接岸に物理的環境要因が影響を及ぼしていることが明らかになってきた.なお、シラスウナギ漁獲量への捕食の影響について補足的に調べるため、利根川河口周辺にて魚類採集調査を行ったところ、採集個体の胃内容物からはシラスウナギは確認されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浜名湖や黒潮に面した県・河川におけるシラスウナギ漁獲量に基づいて接岸に影響を与える物理的環境要因を特定できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、漁獲・環境データの解析結果を精査すると共に、本解析からシラスウナギの接岸に影響を及ぼすことが示唆された物理的環境要因について、数値モデルによる理論的検証を進める.なお、調査航海によりシラスウナギの接岸回遊期における行動特性の把握を実施するために研究船利用公募への応募を継続的に行う.
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Causes of Carryover |
研究船利用公募に採択されず沖合での調査を実施できなかったため、それに関連する費用が主に次年度使用額となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
沿岸域におけるシラスウナギのサンプルやその処理作業等のために使用する予定である。
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