2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14789
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
田口 尚弘 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (80127943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 賢 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (00314980)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イシサンゴ胚 / 単離細胞 / LPS / レクチン / 細胞培養 / 海藻抽出物 / 分裂誘発物質 / 上皮性細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンゴの遺伝解析には培養細胞が必須である。培養細胞の樹立で分類に必要な分子的データ、染色体データ等非常に有益である。サンゴではいまだ世界中でなされていない。 本研究室では、海藻から抽出した成分を利用し、サンゴの培養細胞樹立を目指している。活発に分裂を繰り返している初期胚は24時間までであり、その後はプラウンチップ状になり、その後、プラヌラとして海水中を遊泳する。外骨格が出来上がったポリプでは、細胞の分離が難しいため、初期発生の時期を選択した。 材料には、初期胚、プラウンチップ期、プラヌラ期から細胞を単離し、利用した。それぞれの細胞の海藻抽出物および種々のレクチン(細胞分裂誘発物質)に対する反応を調べた。また、液体窒素での細胞保存を試みている。また、細胞分裂の様子をビデオ録画して、その様子を観察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
添加剤の種類を増やして検討した。分裂誘発に試した物質は、PHA(ファイトヘムアグルチニン)、PWM(ブタクサ分裂誘発物質)、Allo-A(カブトムシ由来レクチン)、LPS(細菌由来リポタンパク質)、スピルリナ抽出物、海藻由来フコイダン、アルギン酸(褐藻類由来アニオン系糖タンパク質)、ハバノリ抽出物、コンカナバリンAを使用した。無菌人工海水または海水をフィルターろ過滅菌したものを使って培養を行った。 材料に使ったサンゴは、ポリプ(成体)は細胞単離時の死亡率が高いことが判明し、初期胚からプラヌラ期の単離細胞を標的とした。ほぼすべての試薬でシャーレに上皮系の細胞(線維芽細胞様)が現れた。3カ月以上生存は確認されたが、増殖には至らなかった。しかし、中でもPHA が最も多くの上皮性細胞が観察され、細胞の分裂刺激に可能性があることが分かった。 現在、添加物の濃度の設定、温度の設定、分離する細胞の発生ステージといった条件設定を細かく検討している。また、物理的に胚から単離した細胞の液体窒素またはディープフリーザー(-80°C)での保存条件についても、抗凍結剤とともに検討している。 生存率はパリカメノコキクメイシ、ゴカクキクメイシがエンタクミドリイシより高いことが判明している。ミドリイシ科の胚は培養の難易度が高い。また、培養液の浸透圧の重要性が示唆される結果を得ているので、培養液の塩濃度についても検討する。胚を直接培養すると、微生物のコンタミネーションが頻発し、培養の継続が困難となる。細胞培養時に頻発する鞭毛藻類の増殖が大きな問題の一つ。振盪培養の有用性を探る;細胞がシャーレやフラスコの壁面に接着すると分裂が阻害される可能性があるので、振盪培養を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、キクメイシ科のサンゴを中心に培養条件を決定する。今年度の実験により、最適種、温度、培養液、浸透圧、pH等の条件がほぼ決まってきたので、さらにその条件を詰めるように実験を行う。6月から8月にできるだけサンプリングを重ねて、培養実験を行うとともに、胚からの単離細胞を液体窒素で保存できる条件を検討する。保存が可能となれば、実験の時間的制約(サンプリングの時期が夏場に限られている)から解放されるため。 細胞の分裂をビデオ観察する。 振盪培養の有用性を探る;細胞がシャーレやフラスコの壁面に接着すると付着固定され、分裂が阻害される可能性があるので、振盪培養を行う。 渦鞭毛藻のコンタミを防ぐため、胚を1個ずつ個別に分けて培養を試みる。
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Causes of Carryover |
平成28年度は天候不順のため,細胞単離用のバンドル(卵と精子が一体となった放出物)の採取の機会が著しく少なかったことから,当初予定していた細胞培養にかかる試薬や器具類の購入や細胞分裂や増殖を促進することが期待される試薬等を購入する必要がなかったことが最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,夏季の長期予報で猛暑の兆しと言われていること,有藻性イシサンゴの放卵周期に多大な影響を与える月齢周期が好ましく(年によっては一斉放卵が認められない年もある),多くの受精卵を得ることができると期待されることから,次年度使用額分を活用して研究を推進できる見込みとなっている。
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