2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a method to prevent biofouling utilizing the translocation mechanisms of mussels
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15K14801
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 広滋 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (60323630)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 付着生物 / 足糸 / 酵素 / 生理 / イガイ / コラゲナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、船舶や海中構築物に付着してその機能を損なう付着生物を、それらの生物自身が持つ「引っ越し」の機能を利用して防除する技術の開発である。 新江ノ島水族館の協力により、移動頻度が高いことが経験的に知られている深海性のイガイ科二枚貝シチヨウシンカイヒバリガイを研究モデルとして利用することができた。本種を長期間水槽飼育し、行動観察実験を実施した。その結果、水槽内を移動する行動が頻繁に確認された。その行動をタイムラプス撮影により観察した結果、ムラサキイガイと同様、足糸を1本ずつ切断する方法と、幹から切断する方法の2種の切断方法の存在が示唆された。さらに、足を分割してそれぞれからRNA抽出を行い、RNA-seq解析を実施した。 ムラサキイガイにおける、各種ストレスによる移動誘起実験においては、長時間の観察を実施した結果、ストレス付加条件によっては、移動を停止して耐える行動が観察された。得られた結果と、本種が主に分布する潮間帯の環境条件から、本種を自主的に移動させる条件に付いて考察を行った。また、環境変化に耐える際の生理状態を調べる目的で、遊離アミノ酸を効率的に定量する方法を確立し、報告した。 前年度に得た4種類のコラゲナーゼ様配列については、より詳細な発現部位解析と、分子系統解析を実施した。発現部位解析により、4種類の酵素遺伝子はいずれも足糸を幹から切断する部位で確かに発現していることが確認できたが、他の組織でも発現は検出された。一方、分子系統解析の結果により、4種類のうちのひとつは哺乳類のコラゲナーゼ、ひとつは哺乳類のストロメリシンと分子系統学的に近縁であることがわかった。以上より、イガイ類は、別の用途にも使われるコラゲナーゼ類を流用して足糸を切断している可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)