2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K14810
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松井 隆宏 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10600025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 潤 一橋大学, 経済研究所, 講師 (30732432)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済実験 / 食料消費 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、初年度(昨年度)に得られたアンケートと経済実験の結果を用いて、いくつかの分析をおこなった。 「リスク回避度」、「時間割引率」等については、Convex Time Budget Experimentにより計測し、個人のパラメータを得た。(これらのパラメータは、まだ全体での分析には使用していない。) 「利他性」、「互酬的協力度」等については、独裁者ゲーム、公共財供給ゲーム等により計測し、アンケートから得られた公共財的属性を持つ食料の消費との関係について分析をおこなった。その結果、「環境保全型」の食品(農産物:生態系保全型の米)と「資源管理型」の食品(水産物:資源管理型の塩サケ)に対する支払意思額は、ともに「利他性」の大きさと(統計的に有意な)正の関係にあることが明らかとなった。 これまでも、先行研究において、公共財的属性に対する消費者評価に関し、消費者の「利他性(altruism)」が影響している可能性が指摘されており、様々な方法でこうした影響についての分析がなされてきたが、利他性をはじめとする「社会的選好」は正確なデ ータを収集することが難しいことなどから、アンケートにより、「食料消費行動」と「社会的選好のあらわれであると考えられる行動」との関連を分析する方法が主にとられてきた。本研究の成果は、こうした関係について、実験経済学的手法と計量経済学的手法を用いて、より厳密な形で実証したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(昨年度)は、経済実験の内容・デザインを完成させ、アシスタントのトレーニングをおこない、アンケート・実験を実施した。 今年度は、「リスク回避度」、「時間割引率」等について、Andreoni, J., & Sprenger, C. (2012). “Estimating Time Preferences from Convex Budgets” The American Economic Review 102(7): 3333-3356. を参照し、Convex Time Budget Experimentにより計測し、個人のパラメータを得た。(まだ全体での分析には使用していない。) また、「利他性」、「互酬的協力度」等について、独裁者ゲーム、公共財供給ゲーム等により計測し、アンケートから得られた公共財的属性を持つ食料の消費との関係について分析をおこない、良好な結果が得られた。 最終的な(全てを統合した)分析はこれからおこなうことになるが、概ね良好な結果が得られることが期待できる。 まだ最終的な分析は終わっていないが、最も重要な分析は終え、良好な結果が得られていることから、研究の進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、Convex Time Budget Experimentにより計測した、「リスク回避度」、「時間割引率」等の個人のパラメータをまだ全体での分析には使用していないので、これらを組み込んだ分析をおこなう。計量経済学的な分析により、「社会的選好と公共財的属性を持つ食料の消費の関係」、「公共財的属性を持つ食料の消費の動機」、「消費者の公共財的属性の捉え方」の3点を明らかにすることができると考えられる。 また、学生、もしくは一般消費者を対象として追加的な経済実験をおこない、特に、被説明変数として、公共財的属性を持つ食料の消費に対する意識だけでなく、健康に関係する食料の消費に対する意識についても検討をおこなう。 例えば、体に悪いと分かっていてなぜ高カロリー/高塩分のものを食べるのか、どのような人が価格が高くてもヘルシーな(および、機能性を持つ)ものを食べるのか、こうした行動・嗜好はどのような情報を与えることにより変化するのか、などである。これらにより、食料消費に関しより広範な結果を得ると同時に、公共財的属性を持つ食料の消費の特徴を、より鮮明にしていく。
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Causes of Carryover |
年度内に追加的な経済実験をおこなう可能性があったため予算を計上したが、実施が年度明けになったため、次年度使用額が生じた。 次年度に早急におこなうが、そもそも、メインの経済実験は既に終えているため、研究全体の進度に大きな影響はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学生、もしくは一般消費者を対象とした追加的な経済実験に使用する予定である。
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