2016 Fiscal Year Research-status Report
農産物取引における価格支配力と利潤分配に関する研究
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15K14813
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
豊 智行 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (40335998)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農産物取引 / 利潤分配 / 価格支配力 / 市場支配力 / 交渉力 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の日本産青果物(りんご、甘藷、桃、長いも、ぶどう、なし、いちご)の輸出先国(香港、台湾、シンガポール)への国際取引における価格支配力を計測した。その結果、8つの品目・輸出先国の組合せで輸出者の価格支配力が弱く、12の品目・輸出先国の組合せで輸出者と輸入者の価格支配力が対等で、わずか1つの品目・輸出先国の組合せで輸出者の価格支配力が強かった。そのため、これらの輸出において価格支配力は輸入者から発揮されている結果が得られた。このことは換言すれば、国際取引の決定までに要したそれら青果物の生産・流通費用(限界費用)より低い水準に価格が決定されているということである。 なお、品目は同じでも輸出先国が変われば輸出者か輸入者のどちらかが価格支配力を有するというような、輸出先国と価格支配力の発揮に関連は見られない。品目と価格支配力の発揮については、りんご、長いも、ぶどう、いちごは上記輸出先国において輸出者の価格支配力が弱いか輸入者と対等、甘藷となしは価格支配力が対等、ももは輸出者の価格支配力が強いか対等という、関連が見られる。さらに21の品目・輸出先国の組合せのうち19の組合せで輸出額を伸ばしており、価格支配力の発揮と輸出額に関連は見られない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画では甘藷の香港、台湾、シンガポールへの輸出における国際取引での価格支配力を計測する計画であったが、他の品目まで計測したため、分析対象が拡大した。一方で、価格支配力の計測結果を裏付ける輸出者と輸入者の取引の仕方、輸出者間の輸出量調整、輸入者間の輸入量調整の実態に関する聞き取り調査を十分に実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の取引が理論上の価格支配力を発揮させる、または発揮させない取引行動となっているのかを検証するために、国産青果物の輸出者ならびに輸入者への聞き取り調査を精力的に実施していく。また、同様の計測をそれに必要なデータが公表されている国内卸売市場における青果物の取引にも適用し、国内取引における価格支配力も計測していく。それと同時に、その取引参加者への聞き取り調査も行いながら、計測結果と取引行動に理論的な整合性が保たれているのかを確認していく。
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Causes of Carryover |
農産物の取引実態に関する現地調査が予定より少なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ分析からは前年度までに価格支配力の発揮の程度が解明されたことから、次年度はその結果を裏付ける実態に関する聞き取り調査を増やす計画である。国内の農産物の輸出者、海外の輸入者、国内の農産物卸売市場の卸売業者、そこへの出荷者、仲卸業者が聞き取り調査の対象となる。
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Research Products
(3 results)