2017 Fiscal Year Research-status Report
農産物取引における価格支配力と利潤分配に関する研究
Project/Area Number |
15K14813
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
豊 智行 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (40335998)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メコンデルタ / 稲作農家 / 唐辛子農家 / 農協 / 仲買人 / ブローカー / 取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムメコンデルタ地帯の稲作農家とそれらからの買い手との籾の取引実態を調査し、以下のことを明らかにした。買い手には、精米業者と仲買人の二業種の存在を確認した。精米業者が稲作農家と直接に、もしくは、間接的に籾の買取の契約を結ぶ形態がある。間接的な契約では、農協が仲介し、農協は買取の契約数量に応じた手数料を精米業者から得ている。両契約において精米業者が買取価格を作付前、もしくは、収穫前に提示するが、その価格に稲作農家が満足できず、他の買い手に売却することにより、契約した買取が履行されないこともある。仲買人は農家との直接取引、もしくは、ブローカー(購買代理人)を介した間接的取引により、買取をしている。ブローカーは仲買人から指示された買取価格を稲作農家に提示し、その価格で籾の集荷に努め、集荷量に応じた手数料を仲買人から得ている。 また、同地帯の唐辛子農家とそれらの買い手との取引実態も調査し、次のことを解明した。買い手には、農協と仲買人が存在する。農協は農家の収穫毎にそこでの収穫量をその時に農協が設定する価格で買取りをしている。農協は組合員農家と非組合員農家から買取するが、組合員農家に限っては最低保証価格を設定している。仲買人も収穫された唐辛子に対する価格を農家に提示し、農家はその価格に満足すればその仲買人に売却している。仲買人はプローカーを介して農家から買取ることもあるが、この場合、仲買人はブローカーに買取価格と集荷上限数量を指示し、上限数量まで集荷量に応じた手数料を支払っている。 稲作農家においても唐辛子農家にも取引で決められる価格と数量を買い手と交渉することによる取引交渉力の発揮行動、また、農家間で農産物の供給量を調整することによる市場支配力の発揮行動のいずれも見られなかった。そのため、これら農家側より価格支配力が発揮されることはない状況にあると考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた日本産農産物の輸出における国際取引での価格支配力の計測結果を裏付ける輸出者と輸入者の取引の仕方、輸出者間の輸出量調整、輸入者間の輸入量調整の実態について解明する聞き取り調査を実施することができなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の取引行動が、理論上の価格支配力を発揮させる、または、発揮させない取引行動になっているのかを検証するために、国産農産物の輸出者ならびに輸入者への聞き取り調査を実施していく。その際に価格支配力の発揮が計測結果で顕著であった品目の取引当事者から優先的に調査する。
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Causes of Carryover |
(理由) 計画した農産物の取引実態に関する現地聞き取り調査が出来なかったためである。 (使用計画) 今後の研究の推進方策に述べたように、国産農産物の輸出者と輸入者への取引実態調査を実施する。
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Research Products
(4 results)