2015 Fiscal Year Research-status Report
現地砂礫を活用した環境調和+節水型の畑地かんがい法の展開
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15K14819
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
森井 俊廣 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30231640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤巻 晴行 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (90323253)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 土の毛管障壁機能 / 土のキャピラリーバリア / 節水かんがい / 塩分集積制御 / 土中水分測定 / 土の電気伝導度測定 / パレスチナ西岸地区 / 土の不飽和水分特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的: 乾燥・半乾燥地域は,太陽エネルギーが豊富で農業生産力は潜在的に人きい。それを制約するのが希少な地表水資源と塩分集積による土壌劣化である。本研究では,現地に分布する砂礫材がもつ毛管障壁機能(保水と遮水性;CB)を利用して,少ないかんがい水量で済み,かつ浅層の地下水からの塩分上昇を遮断できる畑地かんがい法を提案し,その実用性を圃場植栽試験で明らかにする。 研究実施計画: 初年度(H27年度)では,①地下水からの塩分上昇に対するCB層の制御機能を,過酷な蒸発散条件にある夏期のビニールハウス内での植栽実験により検討する。合わせて,②本研究で検討する新たなかんがい農法の適用候補地の海外調査を行う。 研究実績の概要: ①ホースで連結したコンテナーボックスを埋設し,一定水位の模擬地下水を循環させ,土中の複数点に埋設した水分・塩分濃度(電気伝導度)計測センサーにより,地下水面からの毛管上昇の遮断,ならびに節水かんがい時における礫層上部での水分捕捉と植生成長に及ぼす影響を定量的に評価することができた。②研究分担者がこれまでに研究交流の実績をもつパレスチナ西岸地区ナジャハ大学(Nablus,Palestine Authority)を介して,パレスチナヨルダン川西岸地区のRamarrah市西方郊外のWadi Al-Fawar谷に農地(オリーブ園)を借用し,平成27年度9月より,現地に部分CB区画を設置し,土中水分と気象の観測を開始した。相対的に雨量が多い時季のため土中水分は高い状態にあるが,その中でも,現地砂礫を埋設した区画では相対的に多くの土中水分が捕捉・貯留される結果がえられた。引き続き28年度も継続的に計測を進めるとともに,現地土壌の粒度や水分特性曲線等の土壌物理性を調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で説明したように,平成27年度の研究課題としてあげた①地中に礫層を敷設したCB圃場における地表かんがい水の集積効果,ならびに礫層による地下水からの毛管上昇水の移動制御効果を明らかにできた。また,平成27年度では,②海外調査により,在来農法の現状および土質特性を調べ,土の毛管障壁機能を利用した節水かんがい法の適用候補地を探すとしていたが,初年度内に具体的な候補地を選考でき,かつすでに半年以上にわたる計測が実施できており。この課題については,当初計画以上に進展していると考える。なお,平成27年度では,主に②の調査研究の取りまとめを先行しており,①の研究成果の取りまとめ・学術公表は平成28年度前半に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)局所的に敷設するCB層の直径と敷設深さを実験計画的に変えた複数個のプロットを設置し,点滴かんがいにおける浸潤水の集積状況とロスを計測するとともに数値実験と照らし合わせて,局所的なCB層の大きさや埋設深さによる集水効果を定量化する。具体的には,圃場にポット状の実験プロットを造成し,植栽実験により,かん水量と礫敷設の有無の影響を定量化する。礫の敷設範囲を根群域と同程度としたプロット,2倍程度としたプロット,そして礫を敷設しない対照プロットとする。礫層の埋設深さは,10cm~30cm程度の2ケースを組み合わせる。かん水量は,日蒸発量の1/2を基本とし,2つの対照プロットのうち片方には日蒸発量と同程度のかん水量を供給する。かん水後の土中の水分量は,深さ方向に複数個埋設した水分センサーで計測し,保水性の確認のためテンシオメータによりサクション計測を実施する。生長が早いミズナを用い,収穫後,草丈や新鮮重に対する藻層敷設の有無,礫層の大きさおよびかん水量の影響を統計手法により定量化する。 (2)土の保水・透水性に関する室内試験を実施し,不飽和土における水分移動のメカニズムを普遍的に考察することにより,CB機能の規定要因(粒径の組み合わせ等)を明らかにする。具体的には,土柱試験装置により,砂層と礫層の境界面近傍における土壌水分量を測定し,砂の空気侵入値と礫の水侵人値の差によって生じるCBの破過圧力を定量化する。粒径を変えた実験により,砂材と礫材の最適な組み合わせを提示する。 (3)前年度に引き続き,パレスチナ西岸地区に設営したCB圃場区画で土中水分等のモニターを進めるとともに,現地土壌の土壌物理特性を調査し,節水かんがい法の実用性の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度末あるいは次年度当初に,海外適用地として造成したパレスチナ西岸地区Ramallah市近郊の試験サイト(階段状に傾斜したオリーブ園)の地形測量を行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に生じた次年度使用額を用いて,アンマン経由でパレスチナ西岸地区Ramallah市に渡航し,トラバース測量により試験サイトの地形測量を行う。ハンディタイプの測量用コンパス,レーザー距離計等を購入し,持ち込む。
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Research Products
(5 results)