2016 Fiscal Year Research-status Report
観測が困難な場所における積雪観測手法の構築:見落とされていた積雪融雪過程の解明
Project/Area Number |
15K14824
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 積雪 / 融雪 / 森林帯 / 開空度 / 小型温度データロガー / 山岳域 / 樹冠遮断 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動が積雪・融雪に及ぼす影響評価には何らかの積雪・融雪モデルが利用されるが、ほとんどの積雪・融雪モデルは標高がさほど高くなく、また、森林の影響を受けないオープンスペースにおける積雪データによって構築されている。本研究では、観測そのものが極めて困難であるために、観測データの空白地帯ともいえる高山地帯および森林内における積雪観測手法を新たに開発する。これにより、これまでは見落とされていた積雪・融雪プロセスを指摘し、超高精度での気候変動影響評価を行うための積雪・融雪モデルの新展開を提示する。 今年度は、石川県農林総合研究センター内に約800×400mのエリアを設定し、この中に21地点の積雪観測地点を設けた。各観測地点には小型温度データロガーを活用した積雪深計を設置し、藤原ら(2015)の方法によって日単位の積雪深を観測した。次いで、積雪と地形特性との関係を調べるために、地形変数として標高、斜面方位を抽出した。さらに、林冠の隙間を百分率で表す樹冠開空度を利用した。そして、21観測地点の日積雪深と変数(標高、斜面方位、開空度)との相関係数を日ごとに算出した。 全21地点の観測積雪深と地形・森林特性(地点の標高、斜面方位(Northing)、開空度)との相関係数を日ごとに求めたところ、12月~1月の堆積期においては、標高と積雪深の相関係数が最も大きいが、2月上旬からの融雪期においては斜面方位、開空度と積雪深の相関も強くなっていることが分かった。また、林内の積雪深とオープンの積雪深を比較したところ、2地点を除くとオープンの方が森林内よりも積雪が遅くまで残っていた。また、積雪深の増加量を比較することで降雪の樹冠遮断率を求めたところ、降雪の樹冠遮断率は約21%となり、降水の遮断率およそ11%と比較すると大きいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った実験に関して、観測機の故障などといった大きなトラブルもなく、順調に観測データが得られた。また、結果の取りまとめとして、論文発表も行っておりおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、アクセスが難しい山岳域および積雪量が多い森林帯などにおける積雪深観測手法が確立できた。さらに、同法を用いて森林帯における積雪観測を多地点において行い、森林が積雪・融雪に及ぼす影響について定量評価することが可能となった。今後は、本アプローチの適用事例を増やして、一般的な理論の構築(モデル化)に取り組む予定にしている。
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Causes of Carryover |
更新を予定した気象観測センサーが耐用期間を超えても順調に稼働していることから、データの連続性を考慮してセンサーの更新を先延ばしすることとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
気象観測センサーの更新を予定している。
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