2015 Fiscal Year Research-status Report
ステンレスパイプの表面ナノ制御による牛乳汚れの高品位洗浄
Project/Area Number |
15K14829
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井原 一高 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50396256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅津 一孝 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20203581)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 牛乳汚れ / 洗浄性 / ステンレスパイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
牛乳汚れの洗浄性を飛躍的に向上させることを目的に,精密磁気研磨法を応用し,パイプ内部表面の粗さを国際規格の1/10以下のナノレベルに低減させた超円滑平面を持つサニタリーステンレスパイプを開発する。神戸大学・米国フロリダ大学・帯広畜産大学で構成される国際共同研究チームを組織し,研究を実施した。フロリダ大学が加工を担当した磁気研磨SUS304ステンレスパイプを実験に用いた。実験に用いたステンレスパイプは,表面粗さをサニタリー規格の1/20以下に相当する0.01 μm Raの超平滑表面を持つ。牛乳循環送液装置に,加工パイプを含む3種類の表面粗さが異なるパイプを組み込み,洗浄性評価を実施した。ウォーターバスで一定に保った市販牛乳を,パイプを繋いだ実験ループにポンプを用いて一定流量で循環させた。搾乳ロボットとバルククーラ間の配管を想定し,一定間隔でポンプをon/offさせながら牛乳汚れをパイプに付着させた。この付着試験の後,一定温度に保った規定量の脱イオン水を一定流量で送液し,上述のテストパイプを定置洗浄(CIP)させた。洗浄性評価のために,洗浄後のパイプに残留した汚れ成分を超音波振動によって溶液に溶出させ,成分分析を行った。評価項目は,牛乳濃度,カルシウム濃度,タンパク質濃度である。 牛乳温度が40℃の場合,表面を滑らかにすると洗浄性が向上する傾向が観察された。また,洗浄性は洗浄液流量の影響を受け,流量を増大すると表面平滑化による洗浄性向上の効果が大きくなった。一方,牛乳温度を60℃にすると,表面平滑化による洗浄性への効果が小さくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3項目による洗浄性評価手法が確立され,研究はおおむね順調に進捗していると判断できる。評価系の確立によって基礎データを収集できたことによって,表面粗さと牛乳汚れの洗浄性との関係について,より深い考察が可能になった。また,これらの考察の結果,洗浄液流量との関係についてさらにデータが必要であることと,特定の条件だけではなく多様な牛乳汚れについても研究の対象とする必要があることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
表面粗さの平滑化による牛乳汚れの洗浄性の向上について,より実用的な研究成果を得るためには,レイノルズ数と関連する洗浄液流量との関連について明らかにする必要がある。また,実際にパイプ内表面に付着した牛乳汚れは,牛乳温度をはじめとする汚れの状態を支配する条件によって性状が大きく異なると考えられることから,現在の汚れ付着条件を変化させて,より包括的な評価が実施できるようなデータを収集する必要がある。これらを踏まえて,当初予定していた微生物学的な評価の前に,現在の化学的な成分評価による洗浄性向上について,検討を継続する計画である。
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Causes of Carryover |
当初は,研究代表者が共同研究先である米国フロリダ大学に赴いて研究打ち合わせをする予定であったが,両者の予定が合わず延期したため,旅費において次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
より円滑な研究の実施のために,米国フロリダ大学における研究打ち合わせを実施するため,旅費として使用する。また,牛乳汚れの洗浄性を包括的に評価できるデータを収集するため,新たな実験パラメータに必要な消耗品として使用する。
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