2015 Fiscal Year Research-status Report
土のヒートパイプ現象を利用した地表-地中間の熱輸送装置の開発
Project/Area Number |
15K14830
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
百瀬 年彦 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40742515)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒートパイプ / 土の熱伝導率 / 地中熱利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
常識的には土の熱伝導率は金属よりも小さい。これは土が空気を含むことと関係する。では、土から空気を抜くとどうなるだろうか。私はこれまでの研究で、土の熱伝導率は最大で金属と同じくらいにまで劇的に増大することを見いだした。さらに、この高い熱伝導率が得られる土の中では、高温側から低温側への水蒸気による大きな潜熱輸送が生じ、それと同時に低温側から高温側への液状水の戻りが生じていることを突き止めた。高温側と低温側とで水が相変化を繰り返しつつ循環する現象は、工学分野で良く知られるヒートパイプの作動原理と同じである。そこで、減圧下における土の熱伝導率の劇的な増加を土のヒートパイプ現象と結論づけた。 本研究では、土が大きな熱輸送を行う新素材となりうることに着目し、以下の2つを目的として研究を進めることとした。①ヒートパイプとして機能させた土を用いて熱輸送装置のプロトタイプを製作すること、②その性能を明らかにすること。 熱輸送装置に用いる土は、減圧下における熱伝導率ができるだけ大きくなるものが望ましい。土の選択と水分調整が極めて重要な要素となる。土の選択については、これまでの研究を踏まえ、赤黄色土を用いることにした。石川県農業試験場・能登分場から採取し、風乾させ2mm篩を通過させた。土の熱伝導率を減圧下で測定できるシステムを構築し、幅広い水分条件下の赤黄色土の熱伝導率を測定し、最大の熱伝導率が得られるのは水分率0.25付近であることを明らかにした。 熱輸送装置は、円筒アクリル容器(直径5cm長さ20cm)に赤黄色土(水分率0.25)を充填し、両端をアルミ丸板で接着したものとした。アクリル容器に穴を開け、真空ポンプとレギュレータを用いて、飽和水蒸気圧に保つこととした。この熱輸送装置の性能試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画どおり、熱輸送装置の製作を行い、その性能試験を室内で行った。予想以上の高い性能が得られ、新しい熱輸送技術になりうると考えたため特許出願した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画どおり、性能試験を屋外で行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究協力者が効率よく作業や実験補助を行ってくれたため、想定していた人件費や装置材料費が抑えられた。計測機器が、耐用年数を越えていたため買い換える予定だったが、十分に機能しているため買い換えを控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に引き続き、同じ研究協力者に手伝ってもらう予定でいるが、今年度は当初予定していた装置製作や実験補助に加え、データ解析などを依頼することも計画しており、その研究協力者からも承諾を得ている。今年度は野外実験を行うため、計測機器にとっては過酷な環境となる。このため、野外実験については、新規の計測機器で行う計画であり、速やかに買い換える。
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