2015 Fiscal Year Research-status Report
卵管繊毛の微小管ネットワーク構築と協調的波打ち運動の制御メカニズム
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15K14843
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
奥田 潔 帯広畜産大学, その他部局等, その他 (40177168)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 卵管 / 繊毛 / 平面内細胞極性 / ウシ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ウシ卵管上皮細胞における平面内細胞極性 (PCP) 関連タンパク質の発現パターンを免疫組織化学によって検討した。PCPシグナルは PCP core タンパク質よりシグナルが開始されるが、その core タンパク質のひとつである VANGL1 の発現が卵管上皮細胞に発現しており、さらにその発現は細胞膜の中でも卵巣―子宮軸に直行する面に集中していた。VANGL1発現細胞の多くは卵管上皮細胞の30-50%を占める繊毛細胞であった。また、VANGL1の下流シグナルである DVL3 タンパク質およびPCP effector タンパク質である Inturned タンパク質が繊毛細胞により多く発現することも明らかとなった。さらに、本年度は basal body および basal foot の染色を試みた。具体的には、抗 basal body 抗体および抗 ODF2 (basal foot 構成タンパク質) 抗体を用いて共染色し、共焦点レーザー走査型顕微鏡により標本を観察したところ、basal body に basal foot が付着することを確認できた。 以上より、「正常な卵管」におけるPCPシグナル関連因子の局在および basal body ならびに basal foot 構成タンパク質の発現動態を明らかにすることができた。次年度は、PCPシグナルを CRISPR/Cas9 によるノックアウトもしくは siRNA によるノックダウンにより阻害することで、これらのタンパク質の局在・繊毛構造の形成にどのような影響が出るのかを明らかにすることで、卵管繊毛におけるPCPシグナルの重要性を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年4月の段階で、今年度には 1) 平面内細胞極性関連タンパク質の局在、2) basal body および basal foot の形態観察、3) ODF2 ノックダウン繊毛上皮細胞の作製を予定していた。1) および 2) に関しては「研究実績の概要」に記入した通りに結果を得ることができた。3) のノックダウン細胞の作製には至らなかったが、それに必要な繊毛細胞の培養系の確立を終えることができた。通常の単層培養では細胞上に繊毛が正常に生えることは稀である。本研究においては air-liquid interface culture を用いることによって正常な繊毛の生えた培養繊毛細胞を得ることに成功した。そのため、平成27年度の研究はおおむね順調に進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28 年度はまず PCP シグナルをノックアウトまたはノックダウンした培養繊毛上皮細胞の作製に取り組む。それに成功すれば、PCPシグナル関連因子の局在、basal body、basal foot の形態にどのような異常が生じているかを評価し、さらに繊毛上皮細胞上に直径 6 μmのマイクロビーズを滴下し、デジタルマイクロスコープで観察、動画撮影することにより粒子輸送速度を測定し、繊毛運動の能力に生じた変化を解析する予定としている。本研究により得られた成果は、Society for the Study of Reproduction の年次大会で発表するとともに、Nature Cell Biology 等の細胞科学の専門誌に投稿する予定である。
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