2015 Fiscal Year Research-status Report
未利用生物資源であるルーメン内好アルカリ性細菌の分離と同定
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15K14848
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
片山 欣哉 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (60344298)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ルーメン / 好アルカリ性細菌 / MALDI Biotyper / Bacillus clausii |
Outline of Annual Research Achievements |
質量分析計を用いた微生物同定システム用アルカリ性細菌ライブラリの構築 MALDI Biotyper (MBT)による微生物同定法は、菌体内のタンパクの発現パターンを比較することにより行われるため、培養条件(培地組成、培養温度、培養時間)の違いは同定結果に大きく影響する。MBT データベースに登録されている菌株の培養条件も統一されていないため、本研究での培養条件とは異なっており、同定精度は必ずしも高くはなかった。そこで、MBTによる同定精度および再現性の向上の目的で、TS 寒天培地に加える Na2CO3 濃度と培養時間が MBTの スペクトルパターンに与える影響を調べ、その結果、培養条件をTS 寒天培地、炭酸ナトリウム濃度 1.0%、培養時間 24-48 hと決定した。基準株を含む好アルカリ性細菌22株(うち Bacillus clausii 6株)について、上で設定した培養条件にて培養を行い、新たにデータベースを構築した。 ルーメンからの好アルカリ性細菌の分離・同定 羊ルーメンを中性およびアルカリ性の培養条件で好気培養を行い、各々の培養条件で得られたコロニーについて、MBT による同定を行った。Bacillus属が両条件で共通して分離されたが、MBT で Bacillus clausii と同定されたものは、アルカリ性の培養条件のみであった。MBT により種レベルまで同定できたものは、当初全体の2割程度であったが、同定できなかったものについては 16S rRNA 配列を決定し、16S 系統解析により種の推定を行ってデータベースの補完を行った。これによりMBT による微生物の種レベルの同定率は6割まで向上した。ルーメン以外にも、糞、飼料、畜舎の土壌について好アルカリ菌の分離を行ったところ、糞および畜舎の土壌から Bacillus clausii が分離された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
飼育地域および飼育形態におるルーメン中の好アルカリ性細菌の菌叢変化についての調査が未実施であり、その部分で幾分遅れている。また、当初、好アルカリ性細菌が多く分離されている好気性菌のみを検索対象としていたが、ルーメン内の環境は嫌気的であるため、嫌気性菌についても分離同定を行う必要があると考え、それらの分離同定に加え、嫌気性菌同定のための MBT データベースの構築も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に未実施であった、飼育地域および飼育形態によるルーメン中の好アルカリ性細菌の菌叢変化についての調査を行う。また、ルーメン内好アルカリ性細菌の生菌数の定量とルーメンへの導入経路の予測 についても実施する。平成27年に行った研究結果から、羊に関しては、糞便中および、畜舎内の土壌中から Bacillus clausii が分離されており、これらの分離株について特徴づけを行うとともに、予備実験で分離されている株についてセルラーゼ、プロテアーゼ、抗菌活性を調べ、プロバイオティクス候補株として保存する。これまで嫌気性菌に関して好アルカリ性菌の調査を行っていないので、ルーメンおよび糞便中の嫌気性、好アルカリ性細菌についても探索を行う。 実験結果からルーメン内好アルカリ性細菌の分類と生態についてまとめ、ルーメン発酵への寄与を考察する。 ルーメン内好アルカリ性細菌の生物資源としての可能性を評価し、利用価値のあるものに関してその利用法を提案する。ルーメン由来 Bacillus clausii について、プロバイオティクスとしての利用法を提案する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に計画していた「飼育地域および飼育形態におるルーメン中の好アルカリ性細菌の菌叢変化についての調査」が未実施であり、資料採集にかかる旅費、協力金の支出がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に「飼育地域および飼育形態におるルーメン中の好アルカリ性細菌の菌叢変化についての調査」を行う。
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