2016 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集技術を利用した薬剤の安全性評価モデル動物の開発とその応用
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15K14854
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑原 正貴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30205273)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 安全性薬理 / ウサギ / Kcnq1遺伝子 / ゲノム編集技術 / 薬剤誘発性QT延長症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
心電図における心室興奮の開始から終了するまでの時間に相当するQT間隔の延長は、ヒトの臨床において先天性および後天性QT延長症候群として注目されており、安全性薬理試験では薬物を開発する上での評価項目として重要視されている。しかしながら、従来の非臨床試験では、薬剤誘発性QT延長症候群(心電図QT間隔の延長による致死性の不整脈発症)の発生を予知することができなかった。そのため、不整脈誘発作用のある抗アレルギー薬のテルフェナジンや消化管機能調整薬のシサプリドなどが臨床の現場で患者に処方され、世界的に不整脈死が発生し大きな問題となった。このような事故を回避する目的で、日米欧医薬品規制調和国際会議はS7BおよびE14ガイドラインを制定し非臨床試験の役割を明確に記載するに至った。特にQT間隔を延長する医薬品の不整脈誘発リスクを直接評価できる催不整脈モデルの重要性が示している。申請者は、各種動物における心筋の活動電位を構成するイオンチャネルの特徴と心臓の電気現象の関連性を明らかにし、QT間隔延長の評価法や催不整脈モデルの作出を試みてきた。これらの研究を通してげっ歯類はこのチャネルの電流がほとんど無く、他の動物種において心室筋の再分極予備力を低下させたモデルを作出することの必要性が浮上した。薬剤のIKrチャネル遮断作用によるQT間隔の延長は、心室筋の再分極予備力が低下した際により顕著に出現し、重篤な不整脈の発症に至ると考えられている。そこで、本研究では心室筋における再分極を担うもう1つのイオンチャネルであるIKsチャネルをゲノム編集技術によりノックアウトして再分極予備力が低下したモデル動物を作製し、その有用性を明らかにすることを目的としている。本年度は、コンストラクトを作製し卵にマイクロインジェクションして「現在までの進捗状況」に示す変異個体を得るまでに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCRISPR/Casをデザインしコンストラクトを作製しニュージランドホワイト種のウサギ卵にマイクロインジェクションを行って産仔を得るまでに至った。生まれたウサギの遺伝子を解析した結果、目的の変異を導入できた可能性のある個体が数羽得られた。心電図記録を実施してQT間隔等を解析したが、得られた個体は現段階ではヘテロであることから、顕著な延長は認められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたヘテロ個体の繁殖計画を進める予定である。F0個体を性成熟に達するまで飼育しF1個体の作製に使用する。その際、心電図の記録を実施しQT間隔を中心に解析を実施しその特徴を明らかにする。F1個体を十分に得た後、F2作製個体を選抜し交配して成熟個体を得る。F2個体が首尾よく得られた後は、陽性対照の薬剤を投与することによりQT間隔の延長が検出可能であることを実証する実験を行う。
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