2015 Fiscal Year Research-status Report
芽胞バイオロジー ー芽胞の新たな生物学的意義を探るー
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15K14858
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三宅 眞実 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (10251175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安木 真世 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40589008)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 芽胞 / ウェルシュ菌 / 細胞接着 / 消化管定着 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき、ウェルシュ菌が芽胞形成時にヒト上皮細胞へ接着するかについて確認実験を行った。ウェルシュ菌は上皮細胞との共培養8時間目から細胞への接着が確認でき、その量は12時間まで増加した。一方、共培養液中で芽胞は8時間目から検出され、12時間後にはその量は増加したが、上皮細胞との接着は、12時間目から検出された。 この時間以降についても検討を行ったが、芽胞形成に伴い産生されるウェルシュ菌エンテロトキシン(CPE)の作用により、上皮細胞が障害されて培養基質からはく離したため、12時間を越える時間での細胞への結合を追跡することは困難であった。 光学顕微鏡で芽胞と上皮細胞の接着を観察すると、栄養型細菌、芽胞共に、上皮細胞へ結合していることが確認された。しかしその接着部位の構造については光学顕微鏡では確認が難しく、電子顕微鏡を使用する必要が浮上した。 以上の結果、本実験系でウェルシュ菌の栄養型と芽胞は共に腸管上皮細胞へ接着すること、芽胞の接着を評価するときにはCPEによる上皮細胞の障害を避ける必要があることを確認することができた。今後は、共培養ではなく、栄養型菌あるいは芽胞を精製した上で、これらを直接腸管上皮培養細胞へ作用させ、細胞障害の起こらない条件下で接着を検討する予定である。また、透過型及び走査型電子顕微鏡を用いて、菌あるいは芽胞と上皮細胞の接着部位の微制構造を解析する準備を進めており、これらの結果から接着の生物学的意義について考察し、接着因子の同定へ繋げる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウェルシュ菌と上皮細胞を共培養した際に、上皮細胞が菌の産生する毒素の作用で障害され培養基からはく離してしまった。従って共培養の初期過程に見られる菌と上皮細胞の相互作用しか見ることができていない。また、菌と上皮細胞の結合を光学顕微鏡で確認できたが、緊密な結合様式を取っていることを確認する必要に迫られている。これを受けて現在、電子顕微鏡により菌と上皮細胞の接着部の構造を観察すべき計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ウェルシュ菌の栄養型あるいは芽胞がヒト上皮細胞とどのような形態で結合しているか、電子顕微鏡(透過型および走査型)を用いて観察する。また、これまでの共培養系ではなく、精製芽胞や精製栄養型細菌を直接上皮細胞へ作用したときに同様の結合が観察できるかについても確認する。その後は予定通り芽胞に対する抗体を作成する。 課題としては、高度に精製された芽胞標品が必要になることである。できるだけインタクトな芽胞を調製するため、疎水性を利用した分配法で芽胞を精製したところ、30~50%の栄養型細菌の混入が認められている。精製度を高める手法を確立して、上記実験を進める予定である。
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