2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14859
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 健司 国立研究開発法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (50251418)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人獣共通感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
狂犬病ウイルス(RV, Rabies virus: Rhabdoviridae, Lyssavirus)は、全長約12kbのマイナス鎖RNAをゲノムとし、ゲノム上には、N (核タンパク質)、P (リン酸化タンパク質)、M (マトリックスタンパク質)、G (糖タンパク質)およびL (RNAポリメラーゼ)の5種類のORFが存在する。この内Pタンパク質は、リボヌクレオプロテイン(RNP)複合体の構成因子であり、ウイルスの転写・複製に必須の役割を果たすと同時に、宿主の免疫応答の抑制にも働くことが知られている。我々は、Pタンパク質の創薬ターゲットとしての可能性に着目し、その二量体形成能と免疫抑制活性との関連性を検討した。我々は、まず分割ルシフェラーゼとの融合タンパク質を用いた二分子化学発光相補反応により、Pタンパク質の二量体化を可視化・数値化するアッセイ系を構築した。次に、二量体化を形成しないPタンパク質変異体の作製を試みた。分割ルシフェラーゼを用いた複合体形成アッセイおよびウェスタンブロッティングを用いた解析により、128番目のTyrをAlaに置き換えた変異体Pタンパク質(Y128A)は、二量体を形成しないことが明らかとなった。HeLa細胞を用いたレポーターアッセイにより、野生型Pタンパク質は、NFκBおよびIRF-7によるIFNβ転写活性の誘導を抑制することが示された。Y128A変異型Pタンパク質は、二量体形成能を失っているにもかかわらず、免疫抑制活性は野生型Pタンパク質と同程度に維持していることが明らかになった。Pタンパク質による免疫抑制活性は、二量体形成とは異なる機能部位が担っていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究目標として、高速評価系の構築スを上げていたが、この部分に就いては、概ね達成出来たものと考えている。今後予定している化合物の大規模探索への足場が固められた事は評価に値するが、評価系をより高精度なものとするために、引き続き基礎研究を実施し、ウイルス複製機構の詳細を検討しなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に構築した狂犬病ウイルスPタンパク質の二量体形成を数値化する評価系を384-ウェルフォーマットに応用し、十分に最適化したうえで、化合物の大規模探索を実施する。また、複製評価系を構築して、ウイルスの複製を阻害する化合物の単離を行う。 Pタンパク質による宿主免疫の抑制に関する基礎的な研究を更に進め、創薬標的としての可能性を模索する。 また、狂犬病ウイルスの複製に重要な役割を果たすN (核タンパク質)の多量体形成を数値化する評価系の構築を行い、化合物探索の基盤整備を行う。
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Causes of Carryover |
評価系の最適化に必要な発光試薬を次年度に使用することになったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該資金は、発光試薬購入にあて、研究計画は変更なく進行させる予定である。
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