2016 Fiscal Year Research-status Report
嘔吐をしないヤギを用いた鋭敏・正確・普遍的で非侵襲的な悪心の生理的マーカーの探索
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15K14875
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90282384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪心 / シスプラチン / オンダンセトロン / ヤギ |
Outline of Annual Research Achievements |
シスプラチンがヤギにもたらす行動学的・生理学的反応に対するオンダンセトロンの効果:ヤギに催吐剤であるシスプラチン(CisP)(抗癌剤の一つであるが、副作用として強い悪心 ―吐き気― を引き起こす)を投与すると,およそ120分後に伏臥位姿勢を取って動きが少なくなり,また,その状態は顕著な血中コルチゾル濃度の増加を伴う,すなわちストレスを伴う。一方、オンダンセトロン(CisPにより誘発される悪心を軽減するための薬剤)を予め投与しておくと、CisP投与による上述の行動学的・生理学的反応が緩和された。これらのことから,CisP投与による上述のヤギの行動学的変化は,ヒトにおける悪心と似た薬理学的メカニズムでもたらされることが分かった。 CisP投与による行動学的反応に伴う,血中成分の変化の網羅的探索:ヤギの血漿の電気泳動を行ない,正常時(対照実験)とCisPを投与されて上記の行動学的変化を起こしている状態とを比較した。典型的な血漿の電気泳動像が観察できた。正常時とCisP投与時の泳動像を比較すると,CisP投与ではプロトロンビンおよびトランスフェリンのスポットがより濃く現れる傾向にあった。一方,今回の実験ではアルブミンなどの主要なタンパク質量が多かったためにマイナーなタンパク質の発現量が相対的に少なく,明確な差が感知できなかった。今後の課題として,泳動前に主要タンパク質を取り除き,マイナータンパク質量を増加させることで,これらのタンパク質についても変化を詳細に見ていく。 皮膚電気抵抗値を指標としたウマの発汗の評価法の検討:ウマは動物にしては珍しく,顕著な発汗を示す。ウマのわずかな発汗を,その皮膚の電気抵抗値で評価できることを示した。ヒトでは悪心の指標の一つとして発汗があるので,将来的には,ウマの悪心の指標の一つとして使用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,二次元電気泳動がなんらかの理由でうまく動かなかった。現在は回復している。
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Strategy for Future Research Activity |
CisP投与によりヤギの中枢神経系,特に延髄に発現するc-Fosタンパク質の分布:CisP投与がヤギの悪心の良い実験モデルになり得ることをさらに確実にするため,CisP投与により上述の行動学的反応を示しているヤギの延髄,特に嘔吐中枢と考えられている孤束核における反応を,神経細胞の活動のマーカー物質であるc-Fosタンパク質の分布を指標に検討する。 CisP投与により変化する血中成分の網羅的解析:①昨年度実施した,親水性低分子化合物の血中成分の網羅的な測定を活かし, CisP投与により変化する成分を探索する。②二次元電気泳動のトラブルは現在は解決したので,これの試験を継続してゆく。
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Causes of Carryover |
当初、二次元電気泳動が思い通りにできずに、年度の初めの数ヶ月は、その条件設定のために費やしたため、実際のサンプルの泳動があまりできなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の問題は解決されたので、今後は電気泳動を中心として、ヤギの血漿のオミクス解析に使用する予定である。
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