2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14882
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50347308)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 痛覚 / 発達 / エピジェネティクス / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
幼少期の母仔環境は成長後の情動や社会行動に大きく影響するが、仔へのグルーミングといった母性行動が低下した母マウスに育てられた仔マウスでは、成長後の痛覚が通常よりも過敏になることが示唆されている。一方、2013年にはグルーミングのような撫でられることによる接触刺激に特異的に反応する新規の感覚ニューロンの存在が実証されている。そこで、本研究では“撫で感受性ニューロンが母仔環境下で充分に活性化されることで痛覚が適切に発達する”という仮説を立てて実験を進めている。本年度は、母性行動が低下している早期離乳マウスに育てられたマウスが成長後に、足裏にホルマリン溶液を皮下投与して疼痛を評価するホルマリンテストを実施し、皮下投与した足に対する舐め行動が通常よりも多いことを確認した。また、撫で感受性ニューロン活性を遺伝子改変マウスとミュータジェネシス受容体DREADDsシステムを駆使して時期特異的に制御するために、撫で感受性ニューロンに特異的に発現するMrgprb4の遺伝子近傍にCre遺伝子を組み込んだMrgprb4-cre遺伝子改変マウスを導入した。このマウスの幼少期にウィルスベクターにてDREADDs受容体遺伝子を導入すれば、撫で感受性ニューロン活性を時期特異的に操作可能となる。また幼少期の撫で刺激の中枢内伝達経路を探るために、仔マウスに筆にて撫で刺激を与えてc-Fosの発現解析を実施し、前帯状回皮質などいくつかの領域が幼少期に受けた撫で刺激の活性化部位であることが示されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母性行動が低下している早期離乳マウスに育てられたマウスでは痛覚が過敏になることを確認でき、ミュータジェネシス受容体DREADDsシステムで時期特異的に撫で感受性ニューロンを制御するために必須なMrgprb4-cre遺伝子改変マウスを導入できた。また、幼少期経験が痛覚神経系に記憶されるエピジェネティクス制御メカニズムを探るために、幼少期の撫で刺激によって活性化する神経核も同定されつつあり、計画に沿って進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
Mrgprb4-cre遺伝子改変マウスとDREADDsシステムを用いて撫で感受性ニューロン活性を幼少期に制御する実験を進め、幼少期の撫で感受性ニューロンの痛覚発達への役割を実証する。また、幼少期の撫で刺激が伝わる神経核を特定した後、遺伝子の網羅的解析による痛覚発達に関与する候補遺伝子の絞りこみやその遺伝子のプロモーター領域に結合するヒストンのアセチル化といったエピジェネティクス解析を実施し、痛覚神経系のエピジェネティクス制御メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(1 results)