2015 Fiscal Year Research-status Report
線虫はいかにして宿主を見つけ出すか―光遺伝学的手法を用いた神経-行動相関の解明
Project/Area Number |
15K14896
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 祐子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80452283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉 拓磨 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特任助教 (70571305)
神崎 菜摘 国立研究開発法人 森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (70435585)
小澤 理香 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (90597725)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 化学生態学 / 昆虫便乗性線虫 / ベニツチカメムシ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細菌食性線虫Caenorhabditis japonica(以下、本線虫と表記)と亜社会性昆虫ベニツチカメムシとの間に見られる極めて種特異的な随伴関係が情報伝達物質を介したケミカルコミュニケーションに基づく宿主認識に起因するものであると仮定し、化学・行動生態学・電気生理学に光遺伝学(オプトジェネティクス)を組み合わせた多面的アプローチにより昆虫便乗性の根幹に迫ろうとするものである。 平成27年度は、まずベニツチカメムシの体表抽出物の化学分析を行った。自然条件下で本線虫の便乗行動が生じる6月に、産卵保護中の母親虫と卵塊を採取、飼育後に母親虫と幼虫各々の体表ヘキサン抽出物をGC-MS分析に供したところ、便乗対象としてより適した幼虫に特徴的な脂肪酸が複数検出された。 続いて、これらの成分が宿主認識のキューとして作用するか否か明らかにするため、本線虫の化学走性実験を行った。その結果、いくつかの物質において弱誘引活性の認められる濃度が存在したが、単独で明確な誘引活性を示す物質はなく、抽出物内の成分比を反映した混合物にも明確な誘引活性は認められなかった。分散抑制効果も確認できなかった。一方、同属近縁種C. elegansの誘引物質に対する本線虫の化学走性試験を行ったところ、Benzaldehyde他複数の物質で軽度の誘引効果が認められた。 また、光遺伝学を応用した本線虫変異体作出に先立ち、本線虫種における遺伝子導入操作プロトコルの確立を試みた。実験開始当初、C. elegansの配列情報をそのまま本線虫への遺伝子導入に応用していたが、予想と異なる箇所に蛍光が観察され続けたことから、現在は別のC. elegans用プライマーや新たに設計した本線虫用プライマーを用いてベクター構築~遺伝子導入を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベニツチカメムシ体表成分のGC-MS分析を行い、便乗線虫の宿主認識に関与する可能性のある種特異的成分を5種特定した。また、線虫の化学走性アッセイ系を確立し、上記物質に加えて近縁のモデル線虫誘引性のある物質3種の線虫誘引活性を評価した。線虫変異体の作出については、導入するベクター構築の条件設定を再検討しているところだが、マイクロインジェクション技術自体はすでに確立している。これらのことから、本課題はおおむね計画通りに進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題はおおむね順調に進展しているため、若干修正を加えながら、おおむね研究計画にそって遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
実験開始当初、C. japonicaは非常に近縁であるモデル生物C. elegansと類似した遺伝子発現様式をもつと想定していたが、変異体作出作業を行う中で、C. elegansとは神経細胞の局在その他、大きく異なる遺伝子発現様式を有することを示唆する結果が得られた。そのため、遺伝子コンストラクションの条件設定を再度行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに入手したC. japonicaゲノム情報をもとに、導入するベクター配列を新規設計するとともに、遺伝子発現局在特性等、各種機能解析に要する費用に充てる。
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Research Products
(2 results)