2015 Fiscal Year Research-status Report
網羅的シングルセルゲノミクスの技術基盤構築-究極の環境微生物解析ツールを目指す-
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15K14907
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (30386619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物 / シングルセル / 環境微生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、微量ゲノムDNA増幅に関わる方法論の確立に向けた検討を行った。微量のゲノムDNAを増幅するにあたって、課題となるのがソーティングの効率およびセルの溶解効率の向上、コンタミネーションの排除である。今年度は、ソーティングの際に静電気の発生によるセルのロスを抑えるためにメタルプレートを用いてシングルセルのソーティングを行いゲノムDNAの増幅を行うprotocolの確立、また従来の強アルカリ溶液を用いた方法で細胞膜を溶かせない細胞へのシングルセルゲノミクスの応用を見据えて酵素を用いた溶菌方法の適用を試みた。メタルプレートによるシングルセル増幅においては、ステンレス金属板に容量が50マイクロリットル、深さが4mmのウェルを作成し、セルソーターによる細胞の分取を行った。分取した細胞の溶菌、MDAによる微量DNAの増幅は、ミネラルオイルを重層しウェル内部で行い増幅効率の評価を行った。その結果、テンプレートとなるゲノムDNAがpgオーダーでは高効率にゲノムDNAの増幅が確認されたものの、シングルセルからの増幅効率が低く、シーケンスに供試する量の増幅産物を得ることは困難であった。今後、反応条件等に改善の余地があると思われた。従前のシングルセル増幅では、内因性のコンタミネーションDNAへの懸念から、酵素を溶菌プロセスに用いることは困難であったため、DNaseを用いて内因性のコンタミネーションDNAを除去する方法の検討を行った。数種のDNA分解酵素を用いて検討を行った結果、プロテナーゼK中に存在するDNAを効率的に分解し、その後の増幅プロセスにも悪影響を与えないDNA分解酵素の選定ならびに適切な反応条件を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メタルプレートによるシングルセルの増幅では、予想していた程度の増幅効率が得られず、今後、溶液の蒸発を防ぐ方策や、プレートの形状の刷新などさらなる改善が必要であった。そのため、当初予定したサンプリングした細胞の固定方法の検討に関しては、当初の計画通り進んでいないが、増幅のプロトコールが固まり次第、進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
メタルプレートによるゲノム増幅反応のプロトコールを開発する一方、通常のプレートを用いた方法も併用することで、細胞の固定方法などの検討に関して、遅れを取り戻すべく研究を推進していく予定である。溶菌方法に関しては、本年度において一定の成果が得られているので引き続き、反応効率の向上等の検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
プロトコールの確立にあたり遺伝子の増幅プロセスに関して当初の予定以上に時間を要したことで、最もコストがかかるプロセスであるシーケンシングおよびその解析にまで本年度中に行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度においては、研究をより効率的に進めることでプロトコールの開発を加速化し本年度中に生じた遅れを取り戻すとともに、次世代シーケンサーによるゲノム解読を行うための試薬・消耗品に使用する。
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