2016 Fiscal Year Research-status Report
完全人工合成された葉緑体ゲノムを有する遺伝子組換え植物の創出
Project/Area Number |
15K14912
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中平 洋一 茨城大学, 農学部, 准教授 (40423868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 葉緑体ゲノム / 形質転換技術 / 遺伝子発現誘導系 / 人工リボスイッチ / 人工制限酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、高等植物の葉緑体ゲノムを人工合成し、当該ゲノムを葉緑体に導入して野生型ゲノムと完全に置き換え、安定に維持するための技術基盤を創出する。平成28年度は、自己(組換え型ゲノム)は認識しないが、非自己(野生型ゲノム)を特異的に認識して切断する人工制限酵素を用いることで、組換え型ゲノムへの置換(ホモプラズミック化)を促進する「自己・非自己認識システム」の開発に取り組んだ。まず、低分子リガンド依存的な「人工リボスイッチ」により発現誘導可能な“人工制限酵素”を実装した葉緑体形質転換ベクターを用いて、形質転換効率の向上を試みたが、目標達成(= 従来法の10倍以上の形質転換効率の実現)には至らなかった。そこで、問題点抽出の一環として、目的人工制限酵素が葉緑体で機能することを確認するために、Single-Strand Annealing (SSA)アッセイ系を立ち上げた。具体的には、SSAアッセイ用発光レポーターを葉緑体ゲノムに安定に導入した形質転換系統を作出し、当該レポーター株において人工制限酵素を(一過的に)発現させることで、有望な人工制限酵素の選抜を進めている。 一方、「自己・非自己認識システム」の開発過程で見出された(既存の制御配列の特性を上回る)3種の人工リボスイッチ制御配列については、各制御配列を導入した発光レポーター株の次世代植物を取得し、詳細な評価を進めた。その結果、有用物質生産または遺伝子解析に適した人工リボスイッチの特性(非誘導時のリークレベルの低さや誘導時の活性の高さ等)が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から引き続き、葉緑体形質転換効率の向上を指向して「自己・非自己ゲノム認識システム」の確立を目指したが、残念ながら目標達成には至っていない。そこで、システムの問題点を洗い出すことを目的に、SSAアッセイ系を立ち上げた。今後、当該アッセイ系を活用することで、「自己・非自己ゲノム認識システム」に適した人工制限酵素種の選抜につながることが期待される。また、「人工リボスイッチ」については、葉緑体での有用物質生産や遺伝子解析等において活用できる利便性の高いツールとしての期待が更に高まった。以上より、最終目標に対してはまだ道半ばであるものの、打開策となるSSAアッセイ系の導入や、当初予期していなかったスピンオフ技術(人工リボスイッチ)の成果を勘案し、研究全体としての達成度は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は、目標達成に向けて不可欠な「自己・非自己ゲノム認識システム」の確立に引き続き挑戦する。具体的な戦略としては、平成28年度に立ち上げたSSAアッセイ系を用いることで、葉緑体において確実に機能する人工制限酵素種ならびに(葉緑体ゲノム上の)標的配列を特定する。その結果を踏まえて、当該人工制限酵素を実装した葉緑体形質転換ベクターを構築し、形質転換効率の向上に資するかを確認する。 また、「人工リボスイッチ」については、物質生産における有効性を検証するために、(複数の)ターゲット遺伝子を導入した組換え植物を作出して評価する。
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