2015 Fiscal Year Research-status Report
新型インフルエンザに対する食べるワクチンを色素体で生産する試み
Project/Area Number |
15K14913
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 道之 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50201405)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 食べるワクチン / 新型インフレンザ / E型肝炎ウイルス / ウイルス様粒子 / 色素体形質転換 / ニンジン / 不定胚 / 人工種子 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来「食べるワクチン」には、(1)植物体内での抗原タンパク質の生産量が低い (2)抗原タンパク質が消化される (3)粘膜免疫の誘導が困難 という問題点があり、実用化に対する障壁になってきた。本研究では、タンパク質生産量が極めて優れる色素体形質転換を用いてニンジン根(taproot)に高い濃度で発現させること、胃酸に耐性があって腸管の粘膜免疫を特異的に誘導するウイルス様粒子(VLP: Virus Like Particle、非病原性のカプシドタンパク質にインフルエンザ共通抗原(M2)を融合させたもの)を用いることにより、上記の3つの問題点を克服することを目的とした。本研究では、所属する遺伝子実験センターの遺伝子組換え植物栽培施設を活用し、医学系の共同研究者とのサルを用いた投与実験を目標とする。また、不定胚を用いた人工種子を開発を試みる。 本年度は、ニンジン(Daucus carota L. cv. Kurodagosun)の色素体形質転換を行った。E型肝炎ウイルス(HEV)のカプシドタンパク質のcDNAにインフルエンザ抗原ペプチド(M2)を付加し、抗生物質耐性マーカー(スペクチノマイシン耐性酵素にGFPを融合させたもの)と共に、ニンジン色素体の相同組換えベクターに組込む。これをニンジンの不定胚形成能のあるカルス(embryogenic cell: EC)にパーティクルガンを用いて導入し、色素体形質転換植物を作出する。ホモプラズミック(色素体DNAがほぼ全て組換え体になった状態)となるように抗生物質選抜を繰り返している。 現在は、色素体形質転換におけるホモプラズミック選抜の最終段階と考えている。500 mg/Lのスペクチノマイシン含有の培地上で生育するECが得られた。このECは、青色光を照射するとGFPの蛍光を強く放つ。今後、植物ホルモン・フリーの培地で培養することで、発芽させ、植物体を得る計画である。この植物体を用いて、タンパク質量の定量、VLP形成の有無などの試験に続き、動物への摂食試験についても行う計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ニンジン(Daucus carota L. cv. Kurodagosun)の色素体形質転換を行った。E型肝炎ウイルス(HEV)のカプシドタンパク質のcDNAにHSV-tagを介してインフルエンザ抗原ペプチド(M2)を付加し、抗生物質耐性マーカー(スペクチノマイシン耐性酵素にGFPを融合させたもの)と共に、ニンジン色素体の相同組換え配列をクローン化した色素体形質転換ベクターを作成し、組込んだ。対照実験として、インフルエンザ抗原ペプチド(M2)を付加しないコンストラクトも作成した。 これらをニンジンの不定胚形成能のあるカルス(embryogenic cell: EC、理研BRC RPC00002)にパーティクルガンを用いて導入し、色素体形質転換を行った。ホモプラズミック(色素体DNAがほぼ全て組換え体になった状態)となるように、スペクチノマイシンによる抗生物質選抜を繰り返した。現在は、色素体形質転換におけるホモプラズミック選抜の最終段階にあるものと考えている。500 mg/Lのスペクチノマイシン含有の培地上で生育するECが得られた。このECは、青色光を照射するとGFPの蛍光を強く放ち、形質転換体であることが示唆されている。今後、植物ホルモン・フリーの培地で培養することで、発芽させ、植物体を得る計画である。この植物体を用いて、タンパク質量の定量、VLP形成の有無などの試験に続き、動物への摂食試験についても行う計画である。
|
Strategy for Future Research Activity |
500 mg/Lのスペクチノマイシン含有の培地上で生育するECについて、継代維持し、一部は凍結保存、一部は人工種子を作製する。また、植物ホルモン・フリーの培地で培養することで、発芽させ、植物体を得る。再生した植物体は、最初は屋内の人工気象室室で、続いて特定網室で栽培する。この植物体の主に根を用いて、タンパク質量の定量、VLP形成の有無などの解析に続き、動物への摂食試験についても行う計画である。具体的には、器官における目的タンパク質の量と質(分解や修飾の有無)をwestern blottingで、カプシドタンパク質の自己会合したウイルス様粒子(VLP)形成ついては、超遠心密度勾配遠心分画と電子顕微鏡観察により調べる。得られた形質転換ニンジン根や葉等を実験動物(サル)に経口投与し、粘膜免疫と全身系免疫の活性化を調べる(外部共同研究)。一方で、ニンジンの不定胚形成能のあるカルス(embryogenic cell: EC、理研BRC RPC00002)を用いて迅速に色素体形質転換を行い、不定胚形成能のあるカルスの状態で多量に増殖し、これを人工種子としてすぐに栽培に用いる等、一連の形質転換を短縮するための形質転換系の見直し・再検討を行い、適正化することで、プラットホームとして完成させる方針である。他方、今回作出した色素体形質転換ニンジンに対する、医学的な試験結果が実用に耐えることが判明した場合には、種子を得て遺伝子組換え品種とするための、環境影響評価試験へと継続することも計画している。
|
Research Products
(1 results)