2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14925
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松山 晃久 国立研究開発法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (90399444)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 翻訳制御 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
通性嫌気性微生物は外界の残存酸素状況に応じて自身のエネルギー獲得機構を順応させていく必要がある。これまでに研究代表者らが見出した翻訳因子eIF5Aは、その活性に特異的な翻訳後修飾であるハイプシン化を必要とし、これまでの研究から、この修飾過程において外界の酸素濃度を感知するセンサーの役目が与えられているものと考えられた。 そこで本年度は、翻訳因子であるeIF5Aがどのようにして標的となるタンパク質の翻訳調節を行うのか、その分子メカニズムを明らかにするために、eIF5Aの翻訳後修飾ができないmmd1変異株において発現レベルが低下するタンパク質について、それらのmRNAの配列中にあると思われる、eIF5Aによる調節を受ける配列の特定を目指した。 いつかの標的タンパク質をコードするmRNAについて、部分欠失変異体を作製し、蛍光タンパク質であるGFPを融合させ、野生株とmmd1変異株において発現させて発現レベルを蛍光顕微鏡及びウェスタンブロッティングを用いて調べたところ、欠失させるとmmd1変異株でも発現レベルが低下しなくなる配列を特定した。しかし、このような配列の間には特別な共通配列は見出せなかったことから、eIF5Aは特定の配列を認識して翻訳調節をしているわけではなく、配列以外の何らかの要素を認識して翻訳を制御していることが考えられた。 また、近年、eIF5Aは特定の配列を有するmRNAの翻訳を促進することが報告されているが、eIF5Aの翻訳後修飾がそれらの翻訳に必要かどうかを調べたところ、タンパク質レベルに変化が見られなかったことから、eIF5A自身が翻訳に必要なmRNAとeIF5Aの翻訳後修飾が必要なmRNAは違うことが予想された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最大の目標は、eIF5Aにより直接の制御を受けるmRNA上の配列を特定することであったが、その目標自体は達成できた。ただ、残念なことに、いくつか特定した配列の間に際立った特徴がなく、共通配列を見出すには至らなかった。一方、近年の研究で提唱されているeIF5Aの機能として、特定の配列を有するmRNAの翻訳促進があるが、本研究で特定した配列はそれらとは異なることから、eIF5Aがこれまで明らかになっているものとは異なる機能を持つことは明白であり、本研究の重要性を再認識することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
部分欠失変異体の研究から得られた、eIF5Aによる制御を受ける配列の間には共通性が見られなかったことから、リボソームプロファイリングの手法を取り入れ、より広範囲に標的配列をスクリーニングして制御配列の共通性を見出す。また、得られたeIF5Aの標的について、その翻訳制御にeIF5Aタンパク質自身が重要なのか、それともeIF5Aの翻訳後修飾が重要なのかを、in vitroの翻訳系などを用いて明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
eIF5Aによる制御を受ける配列を特定すれば、そこに共通配列が見出せるものと想定していたが、予想に反して共通性がなく、その後に行う予定であった変異導入などの実験に必要な試薬やキットなどの購入を控えたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
より広範囲に制御配列をスクリーニングするためのリボソームプロファイリングに必要な試薬の購入に使用する。
|
Research Products
(1 results)