2015 Fiscal Year Research-status Report
有機超電子供与剤を用いる芳香族ハロゲン化合物の金属フリー還元的分子変換
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15K14926
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根東 義則 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90162122)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機超電子供与体 / 電子移動 / 官能基変換 / 分子変換 / 還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機超電子供与体について、4-ジメチルアミノピリジンからのものとN-メチルベンズイミダゾールからのものについてそれぞれ合成し、その還元力の強さと官能基選択制について種々の官能基を有するハロベンゼンを基質とし検討した。前者の還元力が勝っていることが明らかとなり、またいずれもカルボニルを含む官能基に対して高い共存性を示すことが分かった。この過程においてニトロベンゼン誘導体を有機超電子供与体と反応させると還元的に二量化したアゾベンゼン誘導体が良好な収率にて得られることが明らかとなった。この反応は室温にて速やかに進行し、ハロゲン基、シアノ基などの官能基と共存できることが示された。また2-フルオロベンゼンとの反応においては、アゾベンゼン誘導体ではなく求核置換が進行したと考えられるフェナジン誘導体が得られるという興味深い知見をえた。また、N-メチルベンズイミダゾールのベンゼン環上にメトキシ基を二個導入した化合物から有機超電子供与体を合成するとメトキシ基のないものに比べて飛躍的に還元力が高まることが明らかとなり、芳香族ハロゲン化物の1電子還元による分子内ラジカル環化反応および2電子還元による分子内カルバニオン環化反応を行い、その挙動を調べた。これまでに知られている有機超電子供与体とは異なる反応性、選択制が見出され、また二つのベンズイミダゾール環を結ぶメチレン鎖の長さによっても反応性がことなることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機超電子供与体の合成については、その手法が文献的に知られているものについてはその報告に従い合成することができた。また文献的に詳細が明らかでないものについても試行錯誤により目的物を合成することができ研究の準備段階の問題は無くなった。また実際の反応においてそれぞれの有機超電子供与体の反応性を反応によって順位づけることができたため、今後新しい反応に展開する際の指標とすることが可能と考えられる。また、還元の機構についても1電子還元によるものと2電子還元によるものを区別するためのプローブの調製もできたので今後の研究を進めるうえで論理的に反応設計と検証を行っていけるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はニトロ基の還元についてはその段階的な還元制御について検討を行い、中間のニトロソ化合物を利用した複素環化反応を開発する。これはベンゼン環上のニトロ基に適用することによりインドール誘導体へと変換できるものと考えられる。また、先に見出されたフェナジン類の合成についてもその反応機構の解明を含めて検討を行う。一方、ハロベンゼン誘導体の変換反応については主としてヨード化合物を基質として1電子還元による芳香族ラジカルを活用したビアリール類の合成や、分子内環化反応などを系統的に整理しながら進めていく。2電子還元反応については、芳香族炭素アニオンをさまざまな親電子剤と反応させることによる選択的な修飾反応の開発を行う。ベンゼン環上のみならずさんまざまな芳香族複素環ハロゲン化合物を基質として選択的な分子変換反応を行う。またハロゲン以外にもイオウ元素などのヘテロ元素の還元的な変換反応を検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年度の残額442円を使い切ることができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費として平成28年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)