2016 Fiscal Year Research-status Report
核酸配列上での発光分子構築反応の開発と遺伝子検出技術への応用
Project/Area Number |
15K14933
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小島 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (30356985)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子検出 / 生物発光 / ルシフェリン / 核酸プローブ / 核酸化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究提案では、遺伝子検出技術の分野では未開拓であった“生物発光”を利用した新しい検出システムの開発を目標に、3つの課題を設定している。課題1)遺伝子配列情報を生物発光シグナルに変換するための新規核酸プローブの作製、課題2)グアニジン核酸を利用した核酸プローブの機能強化、課題3)上記2つの技術の組み合わせによる高感度遺伝子検出システムの確立。従来の蛍光を利用する遺伝子検出法では、細胞内夾雑分子由来の自然蛍光が高感度検出の障害となっているが、生物発光は夾雑物の影響を受けないため、非常に高感度な遺伝子検出が可能になると期待される。 課題1:遺伝子配列情報を生物発光に変換するシステムとしては、研究立案段階で計画した標的配列上で発光基質を化学的に構築する“発光基質構築型核酸プローブ”に加え、標的配列への結合を引き金にして発光基質を放出する“発光基質放出型核酸プローブ”についても開発を進めることとし研究を進めた。“発光基質構築型核酸プローブ”については、昨年度までに基本システムの合成を完了していたので、今年度は“発光基質放出型核酸プローブ”の化学合成を行った。 課題2:snRNAやmiRNA等の短鎖配列への核酸プローブの結合を安定化する技術として、グアニジン核酸を導入した核酸プローブの開発を進めた。グアニジン核酸はリン酸ジエステル結合がグアニジニウム結合に置き換わったユニークな構造を持ち、正電荷を有していることが最大の特徴である。本年度はグアニジン核酸の導入に必要となるダイマー型アミダイト試薬について化学合成を進めた。ダイマー型試薬では4種の核酸塩基に対応した最大16種の化合物が必要となるが、本年度は標的配列に応じた3種のダイマー型試薬についての合成を行なった。現在、これらの試薬を用いてグアニジン核酸を導入したプローブ核酸の合成、及びその評価について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではsnRNAやmiRNA等の鎖長の短い遺伝子配列を高感度に検出する遺伝子検出技術の開発を目指し、遺伝子配列情報を生物発光シグナルに変換する新規核酸プローブを利用した遺伝子検出システムの構築を目指す。研究初年度では、標的配列上で発光基質を化学的に構築する“発光基質構築型核酸プローブ”について開発を進めた。研究計画2年目となる本年度は、標的配列への結合を引き金にして発光基質を放出する“発光基質放出型核酸プローブ”についての研究開発を主に進めた。“発光基質放出型核酸プローブ”では、p-アジドベンジルアルコールの水酸基に発光基質を連結させ、アジド基の還元反応を引き金にして発光基質が放出されるシステムを設計した。本合成では、p-アミノベンジルアルコールを原料とし、ベンジル位の2級水酸基と発光基質との縮合反応が鍵となったが、保護基の選択や縮合反応に問題があり合成が困難であった。そこで、ベンジル位の水酸基が1級水酸基となるよう分子設計を変更してプローブ分子の化学合成を進めた。 一方、課題2のグアニジン核酸については、2つのヌクレオシドがグアニジニウム基により連結されたダイマー型アミダイト試薬の合成を進めた。本年度は、標的遺伝子の配列に対応した3種類のダイマー型試薬について化学合成を行なった。いずれも原料となるヌクレオシドの5’-位水酸基、または3’-位水酸基をアミノ基に変換した後、これらを連結させてグアニジニウム基を構築することで合成を達成した。 研究計画では、本年度中に核酸プローブの化学合成・構築を終え、標的遺伝子を用いたシステムの検証実験を開始する予定であった。しかしながら核酸プローブの化学合成が当初計画よりも困難であり時間を要したため、システム検証実験を開始することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは合成したプローブ分子を用いて核酸プローブの作製を行う。核酸プローブの構築は、5’-末端あるいは3’-末端に一級アミノ基を導入したオリゴヌクレオチドとプローブ分子との縮合反応により達成する。続いて作製した核酸プローブを用いて、本システムの検証実験を行う。標的配列には鎖長30残基の合成DNAを既に調製している。この標的配列に構築した核酸プローブが結合することで発光基質放出反応が誘起される。検証実験では、核酸プローブを過剰量用いるなど、効率的な反応条件を明らかにする。また、本システムでは標的配列は反応前後で変化しないため、新しい核酸プローブとの再結合により反応が繰り返されることで、化学的な増幅が可能になると考えられ、検出感度の更なる高感度化も期待される。そこで核酸プローブを標的配列に対して過剰量添加して、PCR装置を用いて温度変化を加えた場合についても検討し、至適な増幅条件を決定する。 一方、グアニジン核酸を導入したプローブ核酸の評価については、プローブ核酸の末端部位や中央付近にグアニジン核酸を導入した複合型オリゴヌクレオチドを化学合成し、グアニジニウム結合由来の正電荷が二本鎖の熱的安定性に与える影響を融解温度測定により評価する。また核酸分解酵素を用いた水解実験により生物学的安定性を評価する。さらに複数のグアニジン核酸を導入した時の影響についてもそれぞれ定量的な評価を行い、これにより実用的な核酸プローブの設計技術を確立する。 研究最終段階では、上記2つの課題で得た成果を融合させることで、生物発光を利用した高感度遺伝子検出技術の確立を目指す。各課題については、一定の研究成果を得た時点で、国際核酸化学シンポジウム等での学会発表、あるいは専門誌への論文発表により、その成果を国内外に発信する。
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Causes of Carryover |
本年度予算については、研究所内リサイクル制度を活用することで、予定していた設備備品の購入が不要となった。そのためこれらの予算を消耗品類の購入に充て、概ね計画通り予算を執行した。わずかに繰越額が生じたが、最終年度における試薬等の消耗品類の購入に用いることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用計画については、繰越額を消耗品類の予算に含め、その他の設備備品、旅費等については当初計画に変更はない。
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Research Products
(3 results)