2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代細胞内動態制御技術としてのサテライト階層型ナノ粒子の創製
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15K14934
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋田 英万 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80344472)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
永年の間、遺伝子導入技術としてカチオン性材料と遺伝子との静電的複合体が頻用されてきたが、1.生体内バリアを突破するために搭載された様々な素子を段階的に発動させることが困難である2.カチオン性成分が細胞内で導入遺伝子やmRNAと静電的相互作用を介して転写・翻訳を阻害する等の問題があった。本研究では、搭載素子の時空間的に制御された機能発動を実現するナノ粒子として、遺伝子内封コア粒子の周囲に超微小ナノ粒子を集合させた、『電荷的に中性』なサテライト型ナノ構造体(nano Satellite-Organized Lipid Architecture; nanoSOLA)を創成することを目的とする。電荷的に中性な膜を形成するための材料として、申請者が独自に開発した脂質様材料(SS-cleavable and pH-activated lipid-like material: ssPalm)を用いる。 H27年度においては、サテライトとして配置する微粒子として、40~50nmを有する微小ssPalm粒子を調製する方法論を確立し、その物理化学的特性に関して解析をすすめた。サテライト型ナノ構造体を構築するために必要な核酸-脂質複合体の合成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ssPalmは、これまで遺伝子や核酸を内封し、デリバリーするために開発した素子であったが、本材料はこれらの核酸がない状態で粒子を形成させた際には、内水層のない粒子が形成されることを見出した。本粒子を、150 nm程度の遺伝子内封粒子の周囲に対して配置するため、調製法や新たに添加するための材料を組み合わせながら、40-50nmの大きさに制御する方法論を確立した。また、粒子表面および、内部構造の物理化学的特性を明らかとした。その結果、本粒子は血中などの中性pHにおいては安定的に存在し、酸性環境下においては融合しやすい特性を得ることを示唆する結果を得た。 また、サテライト粒子を階層化するための材料として、核酸の脂質コンジュゲートを調製した。研究開始当初は、ポリグアニンとポリシトシンの相補的な結合を用いた階層化を試みたが、ポリグアニンの溶解性が悪いために合成に難航し、この利用を断念した。そこで、ポリアデニンとポリチミンの組み合わせを考え、各々の核酸の脂質誘導体を合成した。これらの核酸を搭載したナノ粒子が安定的に存在しうる条件を見出すと共に、これらの粒子を混ぜた際に粒子経の増大を確認した。これらのことから、核酸の相補的なアニーリングを利用したナノ粒子の制御された自己組織化が可能であることを実証できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、サテライト粒子とコア粒子の配合比を最適化し、コア粒子に対して過剰なサテライト粒子ができない条件を見出す。これにより、コア粒子の周囲にサテライト粒子が配置された構造体ができると考えられる。コア粒子とサテライト粒子をそれぞれ、異種の蛍光により標識し、これら粒子の挙動を共焦点レーザー顕微鏡やFACSを用いて、1) サテライトを保持した粒子として取込まれること、2) 細胞内でサテライト粒子が解離すること などを評価する。 また、細胞への標的化リガンドをサテライト粒子に修飾をおこない、その細胞内取り込みを評価する。特に、サテライト粒子側にリガンドを修飾した場合に、コア粒子の取り込みが上昇するかについて、評価を進める。 また、体内動態の観点から、サテライト側にPEG修飾を施したナノ粒子を血中に投与しその後のコア粒子側の血中滞留性の向上を評価することで、サテライト粒子の血中安定性を評価する。
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Causes of Carryover |
年度末に試薬の購入を検討していたが、在庫があることが判明し、予算節約のためにキャンセルをしたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し金額143,316円を、消耗品の購入費用として利用する予定である
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