2015 Fiscal Year Research-status Report
神経ペプチドCGRPによる免疫系を介した癌微小環境制御軸の提唱
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15K14950
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻川 和丈 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10207376)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CGRP / RAMP1 / がん / 樹状細胞 / 神経系 / 免疫系 |
Outline of Annual Research Achievements |
CGRP受容体特異的サブユニットであるreceptor activity-modifying protein-1 (RAMP1)のコンディショナルノックアウトマウス)とCAG-Creトランスジェニック(TG)マウスとの交配により全身性にCGRP受容体を欠損させたマウスにLewis肺癌細胞株あるいはメラノーマ細胞株を移植し、腫瘍形成を評価した。その結果、腫瘍体積の増加抑制傾向が認められた。このことは、CGRP―免疫系―癌微小環境制御軸の存在を支持するものとなった。一方、作用機構を解明する目的で、骨髄細胞を顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とともに培養し樹状細胞への分化誘導に対するCGRPの作用を検討した。その結果、CGRPの2つのアイソフォーム(αCGRP、βCGRP)ともに分化の抑制作用があり、またよりβCGRPの効果が顕著であることを突き止めた。さらにこのCGRPの効果はRAMP1欠損マウス由来BMDCの分化誘導系では全く認められなかった。これらの結果から樹状細胞の分化においてCGRP受容体を介したシグナル伝達系の必要性が示された。CGRP受容体はGαタンパク質共役型受容体である。そこでcAMP-PKA経路の活性化がこの樹状細胞分化制御にかかわることが推測された。そこで野生型マウス骨髄細胞由来樹状細胞においてCGRP刺激によるcAMPレベルを測定した結果、上昇が確認された。よって樹状細胞免疫系に対してCGRPが重要な役割を演じていることが示唆された。このCGRPを介した樹状細胞免疫系の制御とRAMP1欠損マウスにおける腫瘍増殖抑制作用との関係をさらに検討することにより、神経系ー免疫系ー癌微小環境制御軸の存在とその制御分子メカニズムを明確にすることができると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変動物を用いたIn vivo, in vitro評価は順調に進み、CGRP―免疫系―癌微小環境制御軸の存在評価の一歩を進めることができた。In vivoではRAMP1ノックアウトマウスの表現型が弱いものの、作用が認められたことの意義は大と考える。またCGRPの2つのアイソフォーム(α、β)において骨髄由来樹状細胞分化において作用の相違を認めた研究意義も大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前立腺癌、膵癌発症遺伝子改変マウスとCGRP欠損マウスを用いた腫瘍形成解析:膵癌と前立腺癌を自然発症する遺伝子改変マウスを用いてそれらの癌発症におけるCGRPシグナルの意義を、病理組織学的解析、生化学的解析により明示する。 癌細胞に発現するRAMP1を介したCGRPの機能解析:癌細胞におけるCGRP受容体遺伝子の発現解析、CGRP受容体を介したCGRPシグナルの解析とその機能を解明する。 癌細胞に発現するCGRP受容体のin vivo機能解析:CGRP受容体発現癌細胞のRAMP1遺伝子の発現を抑制し、ヌードマウスの背部皮下に移植するxenograftモデルにより腫瘍形成等の評価を行う。転移能はルシフェラーゼ発現癌細胞を用い、発光を検出することにより確認する。 上記検討によりCGRP―免疫系―癌微小環境制御軸に関して萌芽的知見を得る。
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Research Products
(2 results)