2015 Fiscal Year Research-status Report
しびれ動物モデルでの感覚神経線維特異的評価系の確立とその発症機序の解明
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15K14961
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 貴之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30303845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬理学 / しびれ / 痛み / 感覚神経 / TRPチャネル / 感覚鈍磨 / 神経線維 / 末梢血流障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
しびれモデルとして、抗がん剤オキサリプラチンによる急性末梢神経障害モデルを用いて、C線維に発現するTRPA1の役割を解析した。その結果、代謝物oxalateがプロリン水酸化酵素(PHD)を抑制し、TRPA1のプロリン残基(Pro394)の水酸化が解除されることにより、ROSに対するTRPA1の感受性が増強されることを見出した。さらに、別のしびれモデルとして、マウス後肢の虚血/再灌流による自発的なlicking行動(自発的しびれ様行動)においてもTRPA1が選択的に関与することを見出し、同様に、低酸素負荷によるPHD活性抑制-TRPA1 Pro394の水酸化解除によりTRPA1が過敏化することを見出し、再灌流時に産生されるROSが過敏化したC線維のTRPA1を刺激することにより、自発的しびれ様行動を惹起することを明らかにした。また、このモデルでは、触覚刺激に対して感覚鈍磨が生じることを見出し、自発的しびれ様行動と感覚鈍磨が併発する珍しいモデルであることが判明した。さらに、周波数の違いによりC/Aδ/Aβ線維を個別に刺激できる装置を用いた所、いずれの神経線維も反応が低下しており、感覚鈍磨と符合する結果となった。 また、新たなしびれ病態動物モデルを作成するため、大腿動脈を結紮/除去する慢性後肢虚血モデル、ストレプトゾトシンによる糖尿病性神経障害モデル、抗がん剤末梢神経障害モデルを作成し、いずれも後肢で持続的な血流低下を確認した。さらに、後肢血流低下時にTRPA1刺激による逃避行動が増強され、TRPA1が過敏化していることを明らかにした。 一方、感覚神経線維特異的な刺激/抑制を行うため、Syn1プロモーター下あるいはCre/lox-pによりChR2を遺伝子導入できるアデノ随伴ウイルス(名古屋大学山中教授より)を用いたが、感覚神経特異的な発現は認められたものの、発現量が十分でないのか光刺激によっても何ら行動変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で計画している項目は下記の通りである。 1)各感覚神経線維サブタイプ特異的な神経活動の評価法の確立 2)急性しびれモデルおよびしびれ病態モデルでの各感覚神経線維の活動異常の分子機構の解析 3)末梢神経障害および末梢血流障害による新たなしびれ病態動物モデルの開発 上記の項目のうち、2)に関しては、TRPA1のオキサリプラチンあるいは低酸素による過敏化機構を1つのアミノ酸(Peo394)の脱水酸化という機構まで同定することができ、当初の計画以上に進展したと考えられる。3)についても、痺れ病態モデルをほぼ確立することができ概ね順調に進展している。一方、1)については、ウイルスベクターによるChR2/eArchの特異的な発現は認められたのの、十分な発現が得られず、当初計画より遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究項目のうち、2)および3)についてはほぼ順調に進行していることから、当初計画通りに研究を実施する予定である。 1)については、アデノ随伴ウイルスによる発現量を上げるよう様々な手を尽くしてみるが、万一、in vivoでの光遺伝学的手法や薬理遺伝学的手法を用いることが困難であった場合、感覚神経の初代培養系を用いて、神経線維サブタイプ特異的な発現とその機能解析を実施する。また、in vivoでの神経線維サブタイプ特異的な行動解析を行うため、2015年に報告された細胞膜非透過性の局所麻酔薬QX-314と神経線維サブタイプ特異的な刺激薬(実際にはカプサイシン(C線維)とToll-like receptor 5(A線維)アゴニストflagellin)を用いた神経線維サブタイプ特異的麻酔技術を用いて、薬理学的な解析を行う。
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Causes of Carryover |
アデノ随伴ウイルスによるChR2/eArchの感覚神経線維サブタイプの十分な発現が得られなかったため、予定より実験計画が遅れたため。一方、しびれ発症におけるTRPA1の分子機構の解析が予定より進んだため、全体として残額は少額に抑えられた(8,400円)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品として使用する。
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Remarks |
しびれ発症の分子機構にTRPA1が関与することをプレスリリース。京都新聞3月18日25面、産経新聞3月18日夕刊 10面、毎日新聞3月26日30面に掲載、共同通信社、J-CASTニュース他多数にWEB掲載。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Hypoxia-induced sensitization of TRPA1 in painful dysesthesia evoked by transient hindlimb ischemia/reperfusion in mice2016
Author(s)
So K, Tei Y, Zhao M, Miyake T, Hiyama H, Shirakawa H, Imai S, Mori Y, Nakagawa T, Matsubara K, Kaneko S
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 23261
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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