2015 Fiscal Year Research-status Report
休眠遺伝子を活用する天然物の創出ーリボソーム標的薬剤耐性菌二次代謝物の探索
Project/Area Number |
15K14967
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大島 吉輝 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00111302)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糸状菌 / 休眠遺伝子 / リボソーム工学 / 二次代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、糸状菌の休眠遺伝子を活用する新規天然物の探索を目的とする。すなわち、変異原処理によってランダム変異を起こした、昆虫寄生菌、植物内生菌、薬理活性物質生産糸状菌から、リボソームを標的とする薬剤耐性を示す変異株を選抜して、そこで新たに生産される新規天然物を得る。 本研究では最初に、Aspergillus nidulansを用いて、変異原濃度、変異株を選抜する際の薬剤濃度、培養時間、培地、二次選抜の必要性等の、リボソームを標的とする薬剤耐性を示す変異株の選抜の至適条件を検討した。その結果、変異原とリボソーム標的薬剤に関しては、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジンとハイグロマイシンBを用いるのが最適であることが明らかとなった。その後、昆虫寄生菌、植物内生菌、Aspergillus属等のハイグロマイシンB耐性株を取得した。そのなかには高い確率で二次代謝が活性化された株が含まれていることが見い出された。活性化される二次代謝物は菌によって異なっており、多様性に富む天然物の創出に有用であることが示された。現在、数種の糸状菌の大量培養を行っており、変異株にのみ認められる化合物を単離して構造決定する。 本法は、胞子形成能を有する糸状菌には適用される。しかし、菌糸を生成するものの、胞子形成能を有していない糸状菌が数多く存在する。菌糸に対しても本法が利用され得れば、より多様性に富む天然物ライブラリーの構築が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リボソーム標的薬剤耐性微生物として初めて真核生物に着目した。突然変異誘発薬剤による処理やリボソーム標的薬剤耐性株の選抜の検討から開始した。すなわち、新たな実験スキームを構築したうえで、新規物質生産へと着実に成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の計画通りに、平成28年度には、変異株と野生株の二次代謝物を詳細に分析し、変異株で新たに生産される物質を単離、構造決定する。また、新規物質の薬理作用を可能な限り調べる。二次代謝物変化と薬剤耐性、遺伝子変異の相関を検討する。休眠遺伝子をより効率よく発現させるために、リボソームを作用点とする薬剤に加え、HDAC阻害剤を使用し、それらの併用効果を調べる。 加えて、胞子形成能をもたない糸状菌に対して本法の適用を試みる。
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