2015 Fiscal Year Research-status Report
昆虫―植物相互作用を利用した薬用植物の機能性強化に関する研究
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15K14972
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 謙 立命館大学, 薬学部, 教授 (60418689)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生薬成分 / 植物昆虫相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国で栽培されている重要な薬用植物であるトウキをアゲハの幼虫に食害される条件とネットで囲い食害されないようにした条件で栽培し葉及び地下部を採取した。採集した植物試料を標準的なメタボローム解析の方法を用いて、メタノール‐水‐クロロホルム混液で抽出した。得られた有機層をGC-MSを用いて成分量の変化を網羅的に分析した結果、食害により葉部のligustilide, γ-terpinene及び β-caryophylleneの含有量の増加が認められた。さらに、根でpolyacetylene類 の含有量の増加が認められた。これらの化合物は、食害に対する防御物質である一方で、トウキの主要な薬効成分とされていることから、薬用植物の機能性向上に植物の化学生態学的応答を利用することが有効であることが示唆された。 さらに、同時に採取した昆虫の分泌液から植物の生合成の活性化因子(エリシター)を同定するため、幼虫の吐き戻し液など分泌液成分の分析を行った結果、吐き戻し液にオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸などの脂肪酸類及び植物成分由来の化合物が数多く含有されていることが明らかとなった。これら成分の組成は、虫齢や植物の状態、採取時期など種々の条件により大きく変動していたが、いくつかの共通成分が常に含有されていることを見出し、LC-MS/MS分析により脂肪酸の誘導体であることを明らかにした。今後この化合物の同定を行うとともに、カルス培養で作成した植物に作用させエリシターであるか否かを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬用植物の栽培管理を順調に実施することができ、多くの植物検体及び虫の吐き戻し液を採集することができたことから、支障なく分析を実施できた。 本年度の成果を日本薬学会第136年会で発表した。発表時には、大学研究者のみならず、生薬販売にかかわる業者、漢方製薬メーカーから多くの質問が寄せられ高い評価を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
幼虫の吐き戻し液及び糞に含まれるエリシターを同定と活性の確認を行う。化合物が同定できた場合、化合物を合成し、カルス培養で作成した植物に、傷を入れた後、化合物溶液を塗布してその影響を確認する。化合物が同定されていない場合、糞の抽出液のカラムクロマトグラフ画分を塗布して、葉から放出されるcaryophyllene量を指標としてエリシター化合物の分離・同定を行う。さらに、食害された植物を食害の程度により3段階で採集した試料について次世代シークエンサーによる遺伝子発現量のについて検討し、食害に応答する遺伝子を特定する。
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Causes of Carryover |
実験用植物の栽培管理が順調に進んだため、富山県の圃場に出張する回数が見込みより少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用植物の栽培と食害虫採集のための旅費に充当する。
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