2015 Fiscal Year Research-status Report
ゲノミクスを基盤としたウイルス増殖性改良型Vero細胞の開発
Project/Area Number |
15K14993
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
花田 賢太郎 国立感染症研究所, 細胞化学部, 部長 (30192701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 恭子 国立感染症研究所, 細胞化学部, 主任研究官 (70235034)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞基材 / 感染症 / ウイルス / ワクチン / ゲノム編集 / Vero細胞 / Huh細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカミドリザル腎臓から樹立された連続継代可能な培養細胞であるVero細胞は、多様なウイルスの増殖ができる細胞であり、ワクチン細胞基材として汎用されている。我々は、Vero細胞の全ゲノム配列を初めて解読し(Osada et al 2014 DNA Res, 21, 673)、この細胞とヒトのゲノムは核酸配列レベルで90%を越える相同性があることから、ヒト培養細胞に対して開発されたゲノム編集ツールはVero細胞にもそのまま適用可能かもしれないという着想に至った。そこで、本研究課題では、ヒト感染性ウイルスの生産性が亢進した新規細胞亜株をゲノム編集法を駆使しながら取得することを目指した。 本年度は、ゲノムワイドな変異探索をするVero細胞系統の親株を設定するために主なVero細胞亜株4種類(JCRB0111, JCRB9013, 76, E6)の間で志賀毒素感受性と日本脳炎ウイルス(JEV)生産能の二つの指標において比較検討した。志賀毒素感受性においてはVero E6株が最も安定した高感受性を示し、JEV生産能を指標にした場合には、Vero E6株は他の3種類に比べて顕著に低い能力であった。さらに、HCV 高感受性を持つ亜株としてヒト肝がん由来Huh7細胞から我々が樹立したHuh7.5.1-8細胞株は(Shirasago et al 2015, Jpn J Infect Dis, 68, 81)、JEVの感染感受性も高く、Vero細胞に比べてJEV感染後の細胞致死性が高いことも見出した。これらの結果から、ヒトCRISPRライブラリーのVero細胞への適用性を志賀毒素耐性の獲得を指標にしてテストするにはVero E6株を親株とするが、JEV生産性が亢進した新規亜株を取得することを目的としてゲノムワイドな変異を探索する実験にはHuh7.5.1-8細胞を親株に設定することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノムワイドな遺伝子変異を導入するといった体細胞遺伝学的な解析を実施したい場合には、調べたい表現型を安定に維持する細胞をクローン化し、それを親株として設定することがその後の研究の成否に極めて重要となる。Vero細胞には複数の亜株が存在することから、我々は代表的な4つの亜株を取り揃えてそれらの間での比較検討を先ず行った。そして、どの亜株が最適であるかは探索指標によって異なることを見出した。この基盤整備により、合理的な実験を今後行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトCRISPRライブラリーのVero細胞への適用性を志賀毒素耐性の獲得を指標にしてVero E6細胞株でテストする。一方、Huh7.5.1-8細胞を親株にJEV耐性変異株の分離を試み、耐性の原因となる宿主遺伝子変異の解析からJEV生産に必須な遺伝子が同定できた場合、当該遺伝子を過剰発現したときにJEV生産のさらなる向上が見られるかをHuh7.5.1-8細胞もしくはVero E6株以外のVero細胞を親株にして調べる。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要に記載したように本年度は比較的費用の掛からない基盤整備的な実験が中心であり、また、成果発表を海外の学会で行うこともなかった。一方、後述するように次年度は多くの費用が発生すると予測されるので計画的に次年度に回した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(28年度)ではゲノム編集技術や次世代シーケンサを用いた実験を実施するので、今まで以上に多くの消耗品が必要になる。また、研究成果をできれば海外の学会でも発表したいと考えている。これらの経費に充てるため、27年度からの持ち越し分は28年度に適切に使用する。
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Research Products
(3 results)