2015 Fiscal Year Research-status Report
膜輸送体による食後過血糖抑制機構の解明と過血糖抑制に働く新規生体内基質の探索
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15K15000
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 将夫 金沢大学, 薬学系, 教授 (30251440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 膜輸送体 / ブドウ糖 / ミトコンドリア / メタボローム / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶食時のoctn1遺伝子欠損マウス(KO)小腸組織では、野生型マウス(WT)と比較して10種のアミノ酸濃度と糖代謝基質であるリンゴ酸の濃度が有意に高かった。この原因として、絶食時に組織中で起こる糖新生へのOCTN1の関与が考えられる一方、これまでOCTN1による糖や糖代謝物の輸送は知られていない。そこで本年度は、代謝経路のどこにOCTN1が関与するかを解明するため、OCTN1安定発現細胞株(HEK293/OCTN1)を用い、糖新生に関わるアミノ酸とTCA回路基質に着目してメタボローム解析を行った。この際、水溶性が高くLCカラムに保持しづらいアミノ酸ないし代謝物に対して、アミノ基の誘導体化を試みた。また、糖新生を見やすくする目的でグルコース低濃度の飢餓培養も行った。培養後のHEK293/OCTN1を可溶化、誘導体化後、LC-MS/MSでアミノ酸を定量した。その結果、通常培養下では、空ベクター導入細胞(mock)に比べ、HEK293/OCTN1で5種の必須アミノ酸の細胞内濃度が有意に高く、必須アミノ酸の細胞内への取り込みまたは代謝にOCTN1が関与することが示唆された。また、α-ケトグルタル酸からリンゴ酸までの化合物の細胞内濃度がmockと比べてHEK293/OCTN1において有意に高い一方、クエン酸では変化がないことから、OCTN1がリンゴ酸からオキサロ酢酸を経てクエン酸を生成する経路に関与することが示唆された。この経路にはクエン酸シンターゼやリンゴ酸デヒドロゲナーゼが働くことから、これらの活性に影響する可能性が考えられる。一方、飢餓培養下ではTCA回路基質のほとんどが定量限界以下であった。本研究により、OCTN1が必須アミノ酸の取り込みないしは代謝に関与する可能性が示唆されるとともに、アミノ酸及びTCA回路基質のLC-MS/MSによる定量系が構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸やその代謝物などアミノ基を有する内因性物質の一斉分析に不可欠な誘導体化反応を確立し、有機化学者との共同研究によって誘導体化に必要な試薬の合成に成功した。さらに、得られた誘導体をLC-TOFMSを用いて分析し、精密分子量を測定することも可能となった。また、誘導体化を行うことができないTCA回路基質の一斉分析についても、アミドカラムやHILICカラム等の特殊な分析条件を用いたLC-MS/MSを用いた定量系を構築できた。これらの確立された定量系は、今後の本研究の遂行において有用であることから、研究のさらなる発展が期待される。実際、今年度の検討においても、膜輸送体OCTN1による糖代謝、アミノ酸代謝への影響を、これら測定系を用いて検出することができたことから、来年度はさらに詳細な解析を行うことで、当該膜輸送体が代謝過程のどの反応に関与しているかを特定できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
重水素ないしC13標識したアミノ酸やグルコースを添加培養した後の各代謝物の経時的な変化を、本年度に確立された測定系を用いて捉える予定である。すでに、予備的な検討を行っているが、予想以上のバックグランドが検出されるため、定量的な解析が困難なことが予想される。このため、TOFMSを用いた精密分子量測定による定量を試みるなど、実験系の改善が余儀なくされる。しかしながら、LC-TOFMSは実験にかかる時間やコストの問題もあるため、他のアプローチも並行して行うことを考慮する必要がある。一案として、種々のperturbationをかけることを考えている。例えば、各代謝物を過剰濃度添加した系、各反応過程の阻害剤を共存させた系などを組み合わせ、代謝物の経時変化を追うことを予定している。経時変化を速度論解析することによって、OCTN1が関与する代謝反応を同定し、糖新生への関与を解明する。並行して、現在用いているOCTN1安定発現細胞株(HEK293/OCTN1)以外の細胞系の応用も検討する。外来遺伝子を過剰発現する現在の系では、OCTN1による影響が見やすいという利点がある一方、過剰発現によるartifactを否定することができない。そこで、OCTN1を内因性に発現する種々の細胞系を用い、OCTN1の影響を見るためにその遺伝子ノックダウンや化合物による阻害を検討する。具体的には予備検討において食後過血糖への関与が示唆される小腸の上皮細胞モデルとしてCaco-2細胞を予定している。ただし、Caco-2細胞における遺伝子ノックダウンはその効率が不十分なことも想定されるため、他の培養細胞も合わせて検討する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Dipeptide species regulate nutrient signalling essential for the maintenance of chronic myelogenous leukaemia stem cells.2015
Author(s)
Naka K, Jomen Y, Ishihara K, Kim J, Ishimoto T, Bae E, Mohney R, Stirdivant SM, Oshima H, Oshima M, Kim DW, Nakauchi H, Takihara Y, Kato Y, Ooshima A, Kim SJ.
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Journal Title
Nature Communication
Volume: 6
Pages: 8039
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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