2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横井 毅 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70135226)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬物性肝障害 / 抗てんかん薬 / 個体差 / バイオマーカー / マイクロRNA / 薬剤性肝障害 / 代謝多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では発症頻度が低いが重篤な薬物性肝障害の「発症の個体差」の原因を明らかにすることを目的としている。研究代表者がこれまでに確立した抗てんかん薬であるカルバマゼピンの経口投与によって、Balb/cマウスおよびWisterラットの重篤な肝障害モデルを確立した。遺伝子背景が均一なinbredマウスにおいても発症頻度に大きな個体差が再現良く認められることから、このモデルマウスを研究対象とした。5日間の経口連投後の、1.5、3、6、24時間後の血漿を採取し、vehicleコントロール、non-、 low-、high-responder(res)に分けることができ、頻度はそれぞれ約20%, 40%, 20%であった。Low-およびhigh-responderでは、ALT値がそれぞれ1,000-4,000と、10,000-60,000であった。それぞれのマウス血中の、カルバマゼピンおよび複数の代謝物を定量分析し、ALT値に関わらず、反応性代謝物生成経路を経る3位水酸化物、10,11位エポキシド代謝物及び未変化体などのいずれについても、いずれの群に属するマウスも血中濃度に有意差は認められなかった。よって、個々のマウスに於ける代謝多型が個体差の原因ではないことを明らかにした。さらに、肝障害の増悪に関与する炎症・免疫因子であるS100A8, MIP2等が有意に発現上昇し、Th17細胞系のROR gamma-tも有意に肝臓中のRNAで上昇を確認した。これらの血漿(n=5-10)を用いて、マイクロ(mi)RNAアレイ分析を行い、その解析を慎重に行った。肝臓特異的漏出miRNAであるmiR-122はALTと良い相関を示した。アレイおよび個々のmiRNAの発現結果から、miR-155-5pがhigh-resでALTの上昇よりも早期に変動するバイオマーカーの候補の一つとして見いだされた。このmiRNAの蛋白質targetの検討、さらに予測確率の上昇の為に、他のバイオマーカー候補としてのmiRNAの検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、信頼性が高いと思われるmiRNAarrayのデータを収集することができた。個々のmiRNAには多くのtarget蛋白質があるため、個体差に起因する特定のpathwayを特定するためのin silicoの作業は、まだ終了していない。1つや2つに絞ることを目的としないで、複数のmiRNAから機序を考えていく必要があると思われる。また、カルバマゼピンに由来する肝障害以外に、ラモトリギンをすぐに検討できる状態にある。また、可能であれば私どもが開発したフェニトイン由来肝障害モデルも検討対象にすることを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-155-5pは優れたバイオマーカーと考えられるが、予測性をさらに向上させる為に現在2種類の新しい候補のmiRNAについて検討中である。この選択において、miR-155-5pはTh17細胞の分化亢進に関与することから、この機能と異なるmiRNAを選択する。さらに、miRNAは多くの蛋白質をtargetとするため、実際のin vivoで機能を発揮しているtarget蛋白質を特定する。また、候補のmiRNAが、カルバマゼピン以外の薬物性肝障害モデルにおける発現変動を検討する。具体的には、重症皮膚障害の発症で知られているラノトリギンについて検討する。ラモトリギンを最近私どもが、個体差が大きい重篤な肝障害モデルとして確立したモデルである。Target蛋白質の機能と発現変動を詳しく検討し、個体差の機序をより明確に示す予定である。また、当該のmiRNAおよびtarget蛋白質を発現している細胞株を探索し、in vitroのcell-basedの検出系に適用できるかを検討する。
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Research Products
(11 results)