2015 Fiscal Year Research-status Report
食物アレルギーの根治を目指した新規経皮免疫療法の開発
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15K15003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 晋作 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70207728)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アレルギー / 経皮免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
親水性ゲルパッチ(HG)を用いたアレルゲン経皮免疫療法の可能性を評価するにあたり、牛乳ならびに卵アレルゲンとして牛乳タンパク (MPC) およびOvomucoid (OVM) を経皮投与し、抗原特異的免疫応答が誘導されるかを検討した。その結果、1 mgのOVM含有HGについては、4回以上の免疫にて抗原特異的IgG抗体産生の上昇が認められ、5回投与後のIgG抗体価は、0.1 mgのOVMを3回皮下注射した群の抗体価と同等であった。さらにHGによる経皮投与群においてアレルギーの増悪につながる抗原特異的IgE抗体産生は、皮下注射群とほぼ同等であったが、血清中の総IgE抗体濃度については、皮下注射群より低値であった。一方、1 mgのMPC含有HGについては、少なくとも4回の投与では抗原特異的IgG抗体価の上昇は認められなかった。そこでMPCの皮膚内送達量を増加させるための手法として、マイクロニードルの貼付により出来た穿刺孔を介して抗原を送達させるPuncturing法で評価した結果、抗原特異的IgG抗体産生が観察された。また本手法による抗原特異的IgE抗体産生量ならびに総IgE産生量については、皮下注射群と同等であったことから、本手法は皮下注射に比べて感作に働く可能性が高い訳ではなく、その危険性はこれまでの注射による免疫療法と同レベルではないかと思われる。 次にアレルゲン含有HGの製剤安定性について、アルミラミネートパックに包装した状態で4℃条件下、2週間~6か月保存した時のMPC溶出率を測定したところ、溶出率に大きな変化は見られなかった。また、製剤作製時の負担を考慮したγ線滅菌直後の溶出率にも大きな変化は見られず、本製剤は長期間安定である可能性が示唆された。 また実際の牛乳アレルギー患者さんに対して、MPC含有親水性HGの臨床研究を開始した。現時点で、重篤な副作用は出ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初検討予定であった食物アレルギー動物モデルでの治療実験については、モデル動物の作製に時間がかかり、十分な治療実験を行うことが出来なかった。しかし、次年度検討予定であった医師主導型臨床研究については、倫理委員会の承認が得られたため、今年度中に開始することが出来た事から、研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、昨年度に十分な検討を行うことが出来なかった食物アレルギー動物モデルを用いた治療実験を実施する。また今年度開始したヒトにおけるアレルゲン経皮免疫療法剤の安全性と有効性に関する医師主導型臨床研究を継続して実施する。その他の検討項目については、当初の計画通り実施する予定である。
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