2015 Fiscal Year Research-status Report
胎児防御における関門遷移現象に基づく妊婦薬物療法の精緻化基盤
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15K15007
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (30334717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (40453518)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎盤関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠12.5、15.5および18.5日目マウス胎盤細胞膜画分における異物排出トランスポーターMDR1AおよびMDR1Bのタンパク発現量は、それぞれ2.4~3.0 fmol/µg-proteinおよび0.59~0.79 fmol/µg-proteinであった。異物排出トランスポーターBCRPのタンパク発現量は妊娠12.5、15.5および18.5日目胎盤においてそれぞれ1.2、1.9および1.8 fmol/µg-proteinであり、12.5日目と比較して18.5日目において1.5倍有意に上昇した。Bcrpの基質であるglyburideについて、胎盤透過性の指標であるFUI値は、妊娠12.5、15.5、17.5、および18.5日目においていずれも17~19%であった。一方、妊娠12.5日目に対して妊娠18.5日目胎盤におけるモノカルボン酸トランスポーターMCT1およびグルコーストランスポーターGLUT1のタンパク発現量は、それぞれ15から46 fmol/µg-proteinに3.2倍、21から130 fmol/µg-proteinに6.3倍有意に増加した。細胞膜画分において、栄養供給を担うこれらSLCトランスポーターは妊娠進行と共に大きく絶対発現量が上昇するのに対して、薬剤排出を担うABCトランスポーターの変動は比較的小さいことが明らかとなった。胎盤関門におけるBcrpのタンパク絶対発現量の変動が基質薬物の胎児移行性に与える影響が検出できなかったことから、妊娠進行に伴う胎盤関門におけるBcrp発現量変動の影響は軽微であると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎盤関門の主要機能である排出トランスポーターの細胞膜における発現量は、妊娠進行に伴う変化が小さいことが示された。これは、これまでの胎盤組織ライセートにおける排出トランスポーター発現量が妊娠進行に伴って減少するとのこれまでの報告に基づく我々の予測とは異なり、予定外である。しかし、他の胎盤関門トランスポーターの発現量は妊娠進行に伴って大きく変動することが明らかとなったため、それらトランスポーター発現変動機構の解明など、研究は計画通りに遂行可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠進行に伴う胎盤関門トランスポーターの発現制御機構、妊娠進行に伴う胎児血液脳関門機能変動、胎盤由来物質による胎児成長制御について解析をすすめ、胎児防御における関門ネットワークの役割を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度は効率的に研究を遂行し、具体的には、質量分析関連の試薬購入費などを抑えることができた。旅費についても必要としなかったため、結果的に計画よりも少額の支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の使用予定額は増額となるが、主に試薬など消耗品の購入費等に充てることとする。一部で予定と異なる結果が得られたことから、トランスポーターの発現制御機構解析に予定より多額の支出を必要とする予定である。必要な実験設備は学内及び研究室内の現有設備を使用するため、高額な設備備品購入は必要としない。その他、研究成果発表のための学会参加費、および研究成果を英語論文で発表するための論文校閲費や投稿費としても使用予定である。
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Research Products
(3 results)