2015 Fiscal Year Research-status Report
Gemininの可視化による増殖心筋細胞の新たな同定法の開発と心筋再生
Project/Area Number |
15K15018
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀧原 義宏 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60226967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 芳典 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (10548986)
安永 晋一郎 福岡大学, 医学部, 教授 (50336111)
白井 学 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 分子生物学部, 室長 (70294121)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリコーム複合体 / Geminin / 心筋分裂 / 心臓幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリコーム遺伝子群の一つであるRae28やPcgf5の心筋特異的高発現または欠損によって心筋が脱落し、拡張型心筋症を発症することを独自に明らかにしてきた。従って、心臓発生だけでなく、心筋維持にもポリコーム遺伝子群が重要な役割を果たしていることが解った。これらのポリコーム遺伝子群によってコードされるポリコーム複合体は心臓発生制御において中核的役割を果たしているNkx2.5の転写維持機能を介して心臓発生を制御するだけでなく、細胞の増殖と分化を同時に制御するGemininに対するE3ユビキチンリガーゼとして機能することを独自に見つけた。また、研究室では後者のポリコーム複合体によるGemininタンパク質の安定性制御が幹細胞機能を担っていることを明らかにしている。そこで、本研究ではGeminin-EYFPノックインマウスを独自に作製してGeminin分子を可視化するとともに、Gemininタンパク質を直接細胞内に導入することのできる遺伝子組換え型タンパク質cell-penetrating Gemininを開発し、心筋内のGemininの発現を追跡することによって分裂心筋細胞あるいは幹細胞を同定するとともに、Gemininの発現量を操作することによってその機能制御を行うことを目指している。本研究は、心臓発生だけでなく心筋維持に重要な役割を果たしているポリコーム複合体の直接的標的の一つであるGemininに注目して心筋の分裂や心臓幹細胞の解析に道を開くことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に作成したGeminin-EYFPノックインマウスを用いて、成体においても心筋の中にGemininが高い発現を示す細胞を同定した。GemininはAPC/Cを介したユビキチン-プロテアソ-ム系の制御下にあることやGemininはクロマチンリモデリングを抑制することによって未分化性の維持を担うことから、同定したGemininが高い発現を示す細胞は細胞周期のS/G2/M期に入っている心筋、あるいは心臓幹細胞の可能性が考えられる。一方で、Gemininの発現を操作することによって心筋幹細胞の機能を制御することを目的として、細胞内に直性導入することのできる遺伝子組換え型タンパク質cell-penetrating Gemininの作成、さらにフリューダイム社の発現解析システムを用いて、単離した単一心筋細胞についての遺伝子発現を検討するための実験系の立ち上げを行い、心筋分裂及び心臓幹細胞について詳しい解析を進めるための基盤を確立した。このように初年度の研究は研究計画に従い概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
従来から解析を続けているポリコーム遺伝子群Ra28やPcgf5の高発現マウスやノックアウトマウスを解析することによって、これらの遺伝子群が心臓発生だけでなく、心筋維持に必須な役割を果たしていることを明らかにしてきた。ポリコーム遺伝子群によってコードされるポリコーム複合体はNkx2.5の発現維持機能を介して心臓の発生を制御するだけでなく、細胞の増殖と分化を同時に制御するGemininに対するE3ユビキチンリガーゼとして機能することを明らかにしている。そこで、初年度にはGeminin-EYFPノックインマウスを作製して、心筋の中にGemininの高い発現を示す細胞を見つけた。これはS/G2/M期にある心筋、あるいは心臓幹細胞の可能性が考えられ興味深い。さらに、Geminin分子を直接導入し、細胞内のGeminin発現量を自在に操作可能な実験系や単一心筋細胞の遺伝子発現を解析できる実験系を確立した。今後、これらの新たに確立した実験系を駆使することによってGemininに注目し、心筋分裂と心臓幹細胞の詳細を明らかにし、心筋再生に寄与することを目指す。
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